【Secretシリーズ 4 】 帰り道
翌日午後、昼食を森の中で食べ終わると、ハリーは突然、動かなくなった。
「どうしたんだ?疲れたのか?」
「疲れてはいないんだけど──、ねっ」
ハリーはドラコに、甘えたような顔を見せる。
「別に急いで帰らなくてもいいかなーっと、思ってさ」
「でも、夜になると暗いし危険だし、第一、とても寒くなるぞ。こんな森の中で野宿なんて、僕は絶対にイヤだからな」
ドラコは(ほら、お前も立て!)という素振りで、相手を引っ張った。
ハリーは言うことをきかずに、逆にドラコの手をこちらのほうに引き寄せる。
ドラコは当然、その手を跳ね返した。
「こんな明るいうちから、何するつもりだ、お前は?」
「なにって、そりゃー、ねー」
笑ってウィンクをする。
ドラコは引きつった笑いで、思いっ切り相手の後頭部を張り倒した。
「バカか、お前!!」
ドラコは結構モラル意識が強い。
外で、しかも昼間なんかにそんなことはしないし、する気もない。
ハリーは大げさに頭を振った。
「はぁー………。これがあの子だったらなー。ものすごく素直だったのに──」
ため息をついた。
ドラコの顔色が変わり、焦ったような表情を浮かべる。
ハリーはドラコのコンプレックスを、みごとに刺激したらしい。
自分自身が自分のライバルなんて、聞いたこともないが、ドラコは自分が素直になれないことを、ひどく気にしているようだ。
また、それを克服しょうともしているらしい。
律儀に。
一生懸命に。
「──もっ……、もし、あいつなら、どう言ったんだ?」
「まず心配するよ。動かない僕のからだを気遣って、心配の言葉が出て――」
勢いこんだ口調で、ドラコが言った。
「だいじょうぶか、ハリー?動けないのか?どこか痛いところはないか?」
「そして、どこか怪我をしてないか、やさしく調べてくれて――」
ドラコはハリーの頭といわず、肩や、胸や足、はては腰まで触り始める。
ハリーはご機嫌で言葉を続けた。
「そして、心配のあまりキスをするね。彼のほうから何度も何度も……」
ドラコはガバッと大きな口をあけて、相手の口をふさいだ。
しかも、彼の勢いがつきすぎて、鼻と鼻がぶつかって、お互い顔をしかめる。
まるで別の意味で、本当に鼻血が出そうな展開になってきた。
「それで、僕の服を脱がして――」
ふんふんと素直に頷き、相手のシャツのボタンを外し始める。
「僕の上にまたがって…………」
必死な顔で、言われたとおりのことを始めてしまう。
ドラコはハリーの胴を挟んで、馬乗りになった。
ハリーはニヤニヤ笑う。
「そして僕のズボンのファスナーをおろして……」
ドラコはハリーのベルトに手をかけた時点で、やっと気が付いた。
今自分が何をしているかを。
自分は、いいように騙されている!!
「ハリーっ!この野郎!!なんて、ハレンチなことを僕にさせるつもりだっ!!」
「ちえっ!バレちゃったか。残念。残念」
「――まったく、この恥知らずめっ!」
思いっきり、相手の襟元を容赦なくグイグイと締め上げる。
首がきつく絞まった。
「待ってくれ。苦しい。息が詰まって、本当に死んでしまうよ」
「もう、おまえなんか、死ねっ!」
ドラコは騙されて、怒り心頭だった。
その表情ですら見惚れてしまう。
(なんて素敵でかわいいんだろう!)
うっとりとハリーは思った。
(いつもいつも僕は、どうしょうもなくドラコに釘付けだ)
「素直じゃない君が好き」
そう言って、右のほほにキスをした。
「怒りっぽい君が好き」
今度は左のほほにキスをする。
「プライドの高い君が好き」
おでこにチュッと音をたてて、キスをした。
「嘘つきな君が好き」
左のまぶたにキスをする。
「臆病な君が好き」
右のまぶたにキス。
「泣き虫の君が好き」
鼻にキスをした。
「──なんだか、ものすごく、けなされているような気分なんだけど?」
むっとした顔で、それでも大人しくハリーのキスを、ドラコは受け止めている。
「──じゃあ、かわいい君が好き」
そう言って、キスを再開し始めた。
「きれいな君が好き」
「柔らかくて、白い肌が好き」
「君のにおいが好き」
「おいしそうな、耳たぶが好き」
「ちょっ、──ちょっと待て。そんな恥ずかしいことばかり言うなっ!」
ハリーはわざとらしく、「ふーっ……」と、ため息をついた。
「――まったく君は本当にワガママだね。褒めるのもダメなの?いったい、それのどこ『わがままなんて死んでもいえない性格』なんだよ。ワガママ、言いまくりだよ!──でも、そういうところも、みーんな好き!大好き!!」
ハリーは相手にいっぱいキスをする。
ドラコは笑った。
「やめろ、くすぐったい。僕の顔中を嘗め回すつもりか?」
「そんな、顔だけじゃなくて、もちろんからだ中、全部舐めるつもりだよ」
顔から首筋に頭を移動させつつ、相手のマントをめくり、ドラコのセーターをたくし上げ始める。
「待てよ!まさか、ここでそれ以上のことを、始めようとしているんじゃないのか?」
「そのつもりだけど♪」
「こんなところで、今服なんか脱いだら、寒くて凍えてしまうぞ!今は真冬なんだっ!!」
ハリーはにっこりと微笑んだ。
「なに言ってんの。そのための『魔法』じゃないか。ちゃんとふたりのいる空間だけ外気を遮断して、暖かくするよ。」
「絶対にちがう!魔法はもっと別のことに使うもんだ」
「いいじゃん。減るもんでもないんだからさ」
「やめろ!あれはもっと神聖なことに使うものだ」
「僕と君との行為も神聖だっ!」
「いい加減にしろっ!」
「やらせろ」「やらせない」で二人でまた大喧嘩だ。
「僕は戸外なんか、イヤだからなっ!」
「結構気持ちがいいものだよ。この開放感。誰かに見られちゃうかもの、スリルとドキドキ感。きっと癖になるよ」
「――お前、いったい誰とそんなことを?!」
「君とだよっ!忘れたの?あんなに大胆だったのに?」
「それは僕じゃないっ!!!」
ドラコは真っ赤になった。
それを見て、ハリーは笑う。
からかっているのか、からかわれているのか、もうよく分からない。
ドラコはものすごく怒った顔をしようと、努力はしていた。
不機嫌な顔も、見下した態度も自分は大得意だ。
だけど、ハリーの顔を見詰め続けていると、なんだか全てがバカらしく思えてくる。
自分から初めて好きになった相手だ。
意地なんか張ってられるかっ!
ドラコは自分から腕を伸ばして抱きつき、ハリーの唇にキスをする。
何度も深く。
ハリーは積極的になった相手の行動が嬉しくてたまらなかったが、何かがちがっている感じがした。
何かが、決定的に変だ。
おかしすぎる。
ドラコからのキスを受けながら、小首を傾げていたけれど、すぐに、原因に思い至った。
このドラコは本当に、キスに慣れていないらしい。
(キスというのは本来、こういう方法じゃないんだけどな……)
ハリーは苦笑しながら、相手の顔を引き離した。
「──なんだよハリー!おまえばかりが、キスしているじゃないか。僕にもさせろよ」
ムッとした顔でドラコが抗議する。
「どうしたんだ?疲れたのか?」
「疲れてはいないんだけど──、ねっ」
ハリーはドラコに、甘えたような顔を見せる。
「別に急いで帰らなくてもいいかなーっと、思ってさ」
「でも、夜になると暗いし危険だし、第一、とても寒くなるぞ。こんな森の中で野宿なんて、僕は絶対にイヤだからな」
ドラコは(ほら、お前も立て!)という素振りで、相手を引っ張った。
ハリーは言うことをきかずに、逆にドラコの手をこちらのほうに引き寄せる。
ドラコは当然、その手を跳ね返した。
「こんな明るいうちから、何するつもりだ、お前は?」
「なにって、そりゃー、ねー」
笑ってウィンクをする。
ドラコは引きつった笑いで、思いっ切り相手の後頭部を張り倒した。
「バカか、お前!!」
ドラコは結構モラル意識が強い。
外で、しかも昼間なんかにそんなことはしないし、する気もない。
ハリーは大げさに頭を振った。
「はぁー………。これがあの子だったらなー。ものすごく素直だったのに──」
ため息をついた。
ドラコの顔色が変わり、焦ったような表情を浮かべる。
ハリーはドラコのコンプレックスを、みごとに刺激したらしい。
自分自身が自分のライバルなんて、聞いたこともないが、ドラコは自分が素直になれないことを、ひどく気にしているようだ。
また、それを克服しょうともしているらしい。
律儀に。
一生懸命に。
「──もっ……、もし、あいつなら、どう言ったんだ?」
「まず心配するよ。動かない僕のからだを気遣って、心配の言葉が出て――」
勢いこんだ口調で、ドラコが言った。
「だいじょうぶか、ハリー?動けないのか?どこか痛いところはないか?」
「そして、どこか怪我をしてないか、やさしく調べてくれて――」
ドラコはハリーの頭といわず、肩や、胸や足、はては腰まで触り始める。
ハリーはご機嫌で言葉を続けた。
「そして、心配のあまりキスをするね。彼のほうから何度も何度も……」
ドラコはガバッと大きな口をあけて、相手の口をふさいだ。
しかも、彼の勢いがつきすぎて、鼻と鼻がぶつかって、お互い顔をしかめる。
まるで別の意味で、本当に鼻血が出そうな展開になってきた。
「それで、僕の服を脱がして――」
ふんふんと素直に頷き、相手のシャツのボタンを外し始める。
「僕の上にまたがって…………」
必死な顔で、言われたとおりのことを始めてしまう。
ドラコはハリーの胴を挟んで、馬乗りになった。
ハリーはニヤニヤ笑う。
「そして僕のズボンのファスナーをおろして……」
ドラコはハリーのベルトに手をかけた時点で、やっと気が付いた。
今自分が何をしているかを。
自分は、いいように騙されている!!
「ハリーっ!この野郎!!なんて、ハレンチなことを僕にさせるつもりだっ!!」
「ちえっ!バレちゃったか。残念。残念」
「――まったく、この恥知らずめっ!」
思いっきり、相手の襟元を容赦なくグイグイと締め上げる。
首がきつく絞まった。
「待ってくれ。苦しい。息が詰まって、本当に死んでしまうよ」
「もう、おまえなんか、死ねっ!」
ドラコは騙されて、怒り心頭だった。
その表情ですら見惚れてしまう。
(なんて素敵でかわいいんだろう!)
うっとりとハリーは思った。
(いつもいつも僕は、どうしょうもなくドラコに釘付けだ)
「素直じゃない君が好き」
そう言って、右のほほにキスをした。
「怒りっぽい君が好き」
今度は左のほほにキスをする。
「プライドの高い君が好き」
おでこにチュッと音をたてて、キスをした。
「嘘つきな君が好き」
左のまぶたにキスをする。
「臆病な君が好き」
右のまぶたにキス。
「泣き虫の君が好き」
鼻にキスをした。
「──なんだか、ものすごく、けなされているような気分なんだけど?」
むっとした顔で、それでも大人しくハリーのキスを、ドラコは受け止めている。
「──じゃあ、かわいい君が好き」
そう言って、キスを再開し始めた。
「きれいな君が好き」
「柔らかくて、白い肌が好き」
「君のにおいが好き」
「おいしそうな、耳たぶが好き」
「ちょっ、──ちょっと待て。そんな恥ずかしいことばかり言うなっ!」
ハリーはわざとらしく、「ふーっ……」と、ため息をついた。
「――まったく君は本当にワガママだね。褒めるのもダメなの?いったい、それのどこ『わがままなんて死んでもいえない性格』なんだよ。ワガママ、言いまくりだよ!──でも、そういうところも、みーんな好き!大好き!!」
ハリーは相手にいっぱいキスをする。
ドラコは笑った。
「やめろ、くすぐったい。僕の顔中を嘗め回すつもりか?」
「そんな、顔だけじゃなくて、もちろんからだ中、全部舐めるつもりだよ」
顔から首筋に頭を移動させつつ、相手のマントをめくり、ドラコのセーターをたくし上げ始める。
「待てよ!まさか、ここでそれ以上のことを、始めようとしているんじゃないのか?」
「そのつもりだけど♪」
「こんなところで、今服なんか脱いだら、寒くて凍えてしまうぞ!今は真冬なんだっ!!」
ハリーはにっこりと微笑んだ。
「なに言ってんの。そのための『魔法』じゃないか。ちゃんとふたりのいる空間だけ外気を遮断して、暖かくするよ。」
「絶対にちがう!魔法はもっと別のことに使うもんだ」
「いいじゃん。減るもんでもないんだからさ」
「やめろ!あれはもっと神聖なことに使うものだ」
「僕と君との行為も神聖だっ!」
「いい加減にしろっ!」
「やらせろ」「やらせない」で二人でまた大喧嘩だ。
「僕は戸外なんか、イヤだからなっ!」
「結構気持ちがいいものだよ。この開放感。誰かに見られちゃうかもの、スリルとドキドキ感。きっと癖になるよ」
「――お前、いったい誰とそんなことを?!」
「君とだよっ!忘れたの?あんなに大胆だったのに?」
「それは僕じゃないっ!!!」
ドラコは真っ赤になった。
それを見て、ハリーは笑う。
からかっているのか、からかわれているのか、もうよく分からない。
ドラコはものすごく怒った顔をしようと、努力はしていた。
不機嫌な顔も、見下した態度も自分は大得意だ。
だけど、ハリーの顔を見詰め続けていると、なんだか全てがバカらしく思えてくる。
自分から初めて好きになった相手だ。
意地なんか張ってられるかっ!
ドラコは自分から腕を伸ばして抱きつき、ハリーの唇にキスをする。
何度も深く。
ハリーは積極的になった相手の行動が嬉しくてたまらなかったが、何かがちがっている感じがした。
何かが、決定的に変だ。
おかしすぎる。
ドラコからのキスを受けながら、小首を傾げていたけれど、すぐに、原因に思い至った。
このドラコは本当に、キスに慣れていないらしい。
(キスというのは本来、こういう方法じゃないんだけどな……)
ハリーは苦笑しながら、相手の顔を引き離した。
「──なんだよハリー!おまえばかりが、キスしているじゃないか。僕にもさせろよ」
ムッとした顔でドラコが抗議する。
作品名:【Secretシリーズ 4 】 帰り道 作家名:sabure