ろぐぐぐ!! そのさん
死んだ両親の仇であるはずの臨也を愛してしまった帝人と、遊んでやろうとして本気になってしまった臨也。
何故、僕は「僕」として生まれたんだろう。何故、貴方が仇でなければならなかったんだろう。
何故、何故、何故、僕は、貴方を。
「――ごめんね、」
「っ、」
「こんなこと言っても、君を困らせるだけだよね」
「そっ…な、こ、と、い…て…っ」
「うん、」
「も、もう…と、さ…とか、あさん、は……帰ってこな、いのにっ」
「……うん」
仇、仇、仇。一秒だって一瞬だって忘れたことは無かった。
何の罪も無い父さんと母さんを、直接的ではないとはいえ殺した、僕から奪った。
何時か仇をとろうと、それだけを目標に僕は生きてきたんだ。
――なのに、なのにどうして。
「ぼ、くは、仇をとらな、きゃ…いけ、ないんで、す」
「うん」
「なの、に…どう、して…どうして、優しくするんですかっ」
僕がやらなきゃ、父さんと母さんが報われない。今までの僕が報われない。
やらなきゃ、そのために今まで必死に生きてきたのに。
「君にならいいよ」
「……」
「君には、俺を殺す権利がある。だからいいよ、いいんだよ」
仇をとって、いいんだよ。
どうして、そんなことを。そんなにも優しい笑顔で言うんですか。
どうして、逃げようとは思わないんですか。
どうして、僕は遊びだったんじゃないんですか。
どうして、僕じゃなきゃいけなかったんでしょう。
どうして、貴方じゃなきゃいけなかったんでしょう。
もっと、違う形で出会えていたなら。きっと、こんなに苦しむこともなかったんだろうな。
「……た、い」
「帝人、君?」
「…やり、なおした…いっ、やり直せた、らいい、のにっ」
僕の生まれも、貴方の生き方も、過去も、そして出会いも、全てやり直せれたら。
そうしたらちゃんと貴方を愛せただろうか、貴方の優しさを受け止められただろうか。
「……そうだね、」
「い、ざ…や、さん?」
「俺も、やり直したいな。過去も全部、そうしたらちゃんと…」
ちゃんと君を、愛せたかなあ。
全く同じ思いを、さらりと言って。臨也さんは僕をぎゅうぎゅうと抱きしめる。
震える肩、押し殺したような声、臨也さんのらしくもない姿にまた涙が溢れて。
僕はそのまま、見っとも無く泣くしかなかった。
作品名:ろぐぐぐ!! そのさん 作家名:朱紅(氷刹)