君の隣で、夜が明ける。07
「…だって、本当に終ったかどうかなんて…今は、判らないでしょう?」
だから確認しに行くんだよ、と言ってキラは言葉を濁した。そうして、それはなるべく早い方がいいと続けると、アスランは軽く溜息を吐いた。
「…解った。けど、ひとつ言っておく事がある。…もしかしたら、デュエルのパイロットが、居るかも知れない。」
鼓動が、大きく跳ねる。
何があったのか、と言う事をアスランは知っている。キラ本人から、ストライクの地球降下時に起きた出来事はすべて訊き出した。その記憶が、今だキラを苛んでいる事も承知している。だから、敢えてそう忠告する。
「…うん、そうだよね。ここは、プラントなんだから…」
逸る鼓動と、湧きあがる苦い感情を押し留めて、キラは応えた。
「大丈夫、行こう。」
真っ直ぐに濃紫の瞳を向けると、微かに憂いを帯びた翡翠の瞳は静かに頷いた。
責任を取る。
それは誰かに対しての償いだったり、犯した罪への自責だったり。自分で選び取った行動の先には、必ずそれが付いてまわる。
その形は人によって様々で。
けれど、けしてそれを避ける事は出来ない。
静かに佇む機体の、狭いコックピットの中で、キラは手のひらに収まったそれを見つめる。
沢山の人の顔が浮かんでは消えていく。
その沢山の人達に対して、キラはキラなりの責任を取らなければならない。
真実の納まった小さなディスクを握り締めて、きつく目を閉じる。
自分の感情に気付いてしまってから、閉ざされた瞼の裏に最後に想い浮かぶのは、たった一人。
すべてが始まるのは、多分これから。
作品名:君の隣で、夜が明ける。07 作家名:綾沙かへる