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綾沙かへる
綾沙かへる
novelistID. 27304
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君の隣で、夜が明ける。11

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 思惑はどうであれ、今もなおキラは生きているから。生き残った者の責任があると言ったその人は、多分その「責任」を見付けたのだろうと思った。
 では、自分に出来る事はなんだろう。ここでこうして弱っていく身体を抱えたまま、なにもせずに訪れる終わりを待つことなのだろうか。それならば、それでも良かった筈で。
 ただ、心の何処かで、この人と一緒にいたいと願ってしまったから。そんな甘えが許される筈が無い事は良く分かっていても、今のキラにはそれしか望むことは無くて。けれど、それでは今までの償いにはならない。
 「なに言ってんだよ。」
 呆れたようにディアッカは言った。
 「違うだろ。本当に望む事はなんだよって聞いてんの。放っといても人間はしぶといくらいに生きていける。取り敢えず戦争は終ってるから、さ。責任とろうなんて考えなくてもいいさ、本当は。…ただ、忘れなければいい。」
 己の行動を振り返る事、誰かの命を、その手で奪って来たこと。それさえ忘れずに、繰り返さなければいいのだと。
 「…でも」
 反論しかけて顔を上げると、ディアッカは思いの外近くにいて言葉に詰まった。伸ばされた指が頬に触れて、それから唇に触れる。
 「…単純な話だろ。キラ、オレはさ、おまえの傍で生きていたい。」
 おまえは?
 たったそれだけの言葉なのに、どうしてこんなに心が軽くなるのだろう。どうして、この人は欲しい時に、その言葉をくれるのだろう。
 誰にだって幸せになる権利がある。そう言った親友の言葉が甦る。
 だからキラも、今思った事をゆっくりと告げる。それを誰に咎められようとも、誰かを想う心は自分でも止められなくて。
 「…僕も、あなたの傍で…生きていたい。」
 今まで流れた時間の中で、一番幸せだと思った。
 だから、零れる笑みを留める事なく、微笑んだ。


 眠れない夜を過ごすことが無くなった。
 悪夢を見ることが少なくなった。
 それでも、まだ何処かで生きる事に疑問を感じる自分がいる。
 それが事実でも、少しずつ、本当にささやかで、この上なく大切な望みのために。
 零れるばかりの指先で、漸く掴んだもの。
 それを抱いて、夢を見る。
 眠る時に見るものではなくて、確かにそれは手が届く所にある幸せの、その先に繋がるもの。
 どこまでも遠くまで、繋がって行くもの。

 伸ばした指先の、すぐ先に、確かにそれは存在していた。


END