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綾沙かへる
綾沙かへる
novelistID. 27304
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OP 02

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 キラの性格を考えれば、容易に想像がつく。最愛の姉か、親友か、自分か。たとえそれほど深い関わりがなかったとしても、見知った人間が人質にされた時に、キラが見捨てられる筈がない。
「…解り易いからな、あいつ」
 そこでようやくラクスが自分の所に来た本当の理由を理解した。恐らく、自分とキラの関係を正確に知っているのだろう。それを踏まえた上で、一番危険なのは自分だ。なにしろ、普通に学生をやっていたりするのだから。
「あなたにも、護衛をつけましょうと申し上げたのですけれど、あの二人があまり良い顔をしてくれませんでしたので」
 あの二人、の辺りでディアッカは小さく吹き出した。
「…ああ、まあそりゃ解るな。コレでも一応元軍人だし…あいつらなりに気ィ遣ってくれたんだろ」
 心底面倒臭そうに顔を顰める銀髪の友人と、とても面白くなさそうな顔をしていた癖に最終的にはキラの事を任せてくれた友人は、実はとても友人思いなのだとディアッカは知っている。
 戦争が終ってからディアッカは退役し、あの二人は残った。今更自分達の都合で煩わせたくないと、手を廻してくれたのだろう。
「…そうでしたわね」
 小さく笑ったラクスも、あの時共に戦った仲間だ。だから、本当は巻き込みたくないと思っていたのだろう。安堵したような笑顔だった。
「それでは一応、身辺にはお気を付け下さいね」
 何かあればすぐに連絡を、と言う彼女に頷くと、ラクスは仕切りにあった窓を軽く叩いた。
「お送り致しますわ。お時間をお取りして、申し訳ありません」
 何時の間にか市内をぐるぐると回っていたようだった。確かに話をしている間中大学の前に停まったままでは不審過ぎる。
 礼を言ってマンションの前で車を降りた時には、すっかり夜の時間に入っていた。
 ディアッカの生活する部屋は、自宅ではなく大学に近いマンションの一室だった。それほど広くも狭くもない部屋の中は、殆ど眠る事以外に使っていない所為か生活感が欠けている。唯一それがあるとすれば、パソコンの隣りに乱雑に積み上げられた専門書の山だけだった。
 ドアのロックを確認すると、肩にかけていたデイパックを降ろす。人の気配に反応して照明が仄かに明かりを灯すと、溜息を吐いた。
「…つーか、大体あいつの専門じゃないのか?」
 キラはとてもパソコンに強い。何処へでも簡単に進入出来るし、頑強なセキュリティには泣かされたりもした。
 それだけの能力を擁する人間の情報を、よりにも寄ってネットで流すとは。間抜けかも知れない、と思うと可笑しかった。突き止めようと思えば、恐らく本人が真っ先に犯人に辿りつく事が目に見えている。
 ただ、この事態が本人に伝わっている確率はとても低い。
「ただの愉快犯なら良いけど、な?」
 溜息混じりに呟いて眠っていたマシンを起こすと、何件かのメールの受信を知らせるアイコンが点滅していた。メールボックスを開くと、週に一度必ず届く差し出し人の名前を見て笑みを浮かべる。
 記された内容は、今日もなにもしなかった、とか世話をしてくれる人と温室に行った、とかささやかな生活の一端。忙しなく流れる自分の日常に比べて、切り取られたようにゆっくりと流れて行く小さな世界。
「…心配、なさそうじゃん…」
 あまりにもキラらしい内容に苦笑を零して、放り出してあった鞄の中から携帯端末を探り出した。ボタンを操作して、アドレスを呼び出す。
 小さな液晶に呼びだされた番号。互いに知ってはいても、一度もコールしたことのない数字の羅列を眺めて。
 なんとなく、それだけで届くような気がするから。
 だから。
「…お休み」
 柔らかな笑みと共に、そっと呟く。
 

作品名:OP 02 作家名:綾沙かへる