OP 08
ラクスからの情報で、この一連の事件の犯人は特定出来ている。武器の持ち込みが制限されるコロニー内で、それこそ一般住民に悟られないよう迅速に拘束しなければならない。そう叩き込んで来た筈なのに、孤児院が爆発した、と言う情報だけで一瞬で真っ白になってしまった。
逸る気持ちを必死で抑えて到着した現場で目にしたものは。
「…キラ…?」
ぞっとした。
戦争中よりももっと、なにも見ていない瞳。
冷たい、と言うよりも、生きている感じが全くしない。人形が立っていると言われた方が納得出来るほど虚ろな瞳は、アスランの呼び掛けに微かに揺れた。
「…アスラン」
控え目に掛けられた声は、良く知る少女のもの。視線を動かすと、茶色く変わった髪を揺らして彼女は微笑んだ。
「…申し訳ありません…私が、力不足なばかりに…」
失踪した筈の少女はそう続けて項垂れた。
それに違うさ、と応える。ラクスはこれ以上ないほど動いてくれた。彼女にそうまでさせたのは、遅れてしまった自分達なのだ。叱責されるべきなのは、それを知りながらも今まで動けなかった自分達。
「…今、は…早く、安全な所へ」
いつまでも崩れた建物の傍にいる、と言うのは危険だ。それが解っているのに、そこから動こうとしないのは。
「…キラ?」
唐突に、キラは顔を上げた。表情には全く変化がないにも関わらず、何処かに視線を投げて、小さく呟く。
キラの視線を追うと、隣りの建物の窓辺に一瞬見慣れた銀色の髪が見えた。その、隣りにいた筈の存在。それに思い当ってアスランは目を見開いた。ここに来てから今まで、一度もキラの口から出る事のなかった言葉。
虚ろに見開かれた瞳から、一筋の涙が零れる。
たった一言の、言葉と共に。
「…逢い、たい…」