ワールド・エンド
走る、走る。1分でも1秒でも、早く、あの人に会いたい。
白い、上へと連なる階段を息を切らせながら走り続ける。あと1段、と気合を入れて休むことなく一気に駆け上がり頂上までたどり着いた。ハァハァ、と肩を上下させながら苦しい呼吸をなんとか整えようと息をつく。流れる汗が、うっとおしい。
青いパーカーの袖で汗を拭って顔を上げると、視線の先、離れた場所に求める後ろ姿があり、思わず笑みがもれた。
「三國さんっ!」
声をかけると黒いコートが翻り、その背中が振り返る。こちらの姿を確認した彼が柔らかな笑みを見せた。それが嬉しくて、止めていた足を再び動かし、彼の元へと急いで走る。ようやく目の前まできて、そのまま勢いをころさずに思いっきりその広い胸元へと抱き着いた。
ギュウッと背中まで腕をまわして甘えるように顔を押しつければ、覆われるように体に腕を回されて抱きしめられる。くっつけた顔の横から彼の規則正しい心音が聞こえてきて、そのリズムに安堵した。ほう、と深く息を吐き出せば、頭上から笑いを含んだ声が聞こえてきた。
「そんな汗だくになって走ってこなくても、カードを翳せば一瞬だろう」
揶揄うその口調にムッとして、「使い慣れないんだよ・・・」知ってるくせに、と唇を尖らせて見上げれば、やはり楽しげに笑う彼の顔があった。
嬉しいんだ、と囁いて微笑む顔がゆっくりと降りてくる。それに見惚れながらも、期待に両目を閉じれば、すぐに唇を温かな熱で覆われた。
キスされているんだ、と実感するとともに羞恥にも似たなにかがじわじわと湧き上がってくる。息苦しさに微かに唇を離して息つぎすると、その一瞬後には再び重ねられて。開いた唇のすき間からぬるりとした軟らかいものが口の中に押し入ってきた。
舌を絡めとられて、吸われて、なぞられて。その卑猥な動きにただ奔走される。中で上顎を擦りあげられてその快さに背中が震えた。背後の腕が、煽るようにゆっくりとした動きでその震えを辿る。「んっ、んぅっ・・・」痺れるような刺激が背筋をかけあがり、鼻からぬけたような甘い声がもれた。これ以上はダメだと、頭の中で警鐘がなる。
抗議するようにぐいぐいと背中から彼の服を引っ張ると、ようやく名残惜しげにその唇が離された。開いた口から飲み込みきれずに溜まっていた垂液がこぼれ、お互いの間を繋ぐようにのびている。整わない呼吸が、苦しい。目の前の顔が平然としているのが滲んだ視界にも確認できて、そのあまりの違いが悔しかった。
「そうやって慣れないながらも、一生懸命に一途に想ってくれているだろ。それが、たまらなく嬉しいんだよ」
もう一度、軽く触れ合うだけのキスをされて口元を優しく拭ってくれる相手に、大人ってほんとにずるいと心の中だけで呟いた。
白い、上へと連なる階段を息を切らせながら走り続ける。あと1段、と気合を入れて休むことなく一気に駆け上がり頂上までたどり着いた。ハァハァ、と肩を上下させながら苦しい呼吸をなんとか整えようと息をつく。流れる汗が、うっとおしい。
青いパーカーの袖で汗を拭って顔を上げると、視線の先、離れた場所に求める後ろ姿があり、思わず笑みがもれた。
「三國さんっ!」
声をかけると黒いコートが翻り、その背中が振り返る。こちらの姿を確認した彼が柔らかな笑みを見せた。それが嬉しくて、止めていた足を再び動かし、彼の元へと急いで走る。ようやく目の前まできて、そのまま勢いをころさずに思いっきりその広い胸元へと抱き着いた。
ギュウッと背中まで腕をまわして甘えるように顔を押しつければ、覆われるように体に腕を回されて抱きしめられる。くっつけた顔の横から彼の規則正しい心音が聞こえてきて、そのリズムに安堵した。ほう、と深く息を吐き出せば、頭上から笑いを含んだ声が聞こえてきた。
「そんな汗だくになって走ってこなくても、カードを翳せば一瞬だろう」
揶揄うその口調にムッとして、「使い慣れないんだよ・・・」知ってるくせに、と唇を尖らせて見上げれば、やはり楽しげに笑う彼の顔があった。
嬉しいんだ、と囁いて微笑む顔がゆっくりと降りてくる。それに見惚れながらも、期待に両目を閉じれば、すぐに唇を温かな熱で覆われた。
キスされているんだ、と実感するとともに羞恥にも似たなにかがじわじわと湧き上がってくる。息苦しさに微かに唇を離して息つぎすると、その一瞬後には再び重ねられて。開いた唇のすき間からぬるりとした軟らかいものが口の中に押し入ってきた。
舌を絡めとられて、吸われて、なぞられて。その卑猥な動きにただ奔走される。中で上顎を擦りあげられてその快さに背中が震えた。背後の腕が、煽るようにゆっくりとした動きでその震えを辿る。「んっ、んぅっ・・・」痺れるような刺激が背筋をかけあがり、鼻からぬけたような甘い声がもれた。これ以上はダメだと、頭の中で警鐘がなる。
抗議するようにぐいぐいと背中から彼の服を引っ張ると、ようやく名残惜しげにその唇が離された。開いた口から飲み込みきれずに溜まっていた垂液がこぼれ、お互いの間を繋ぐようにのびている。整わない呼吸が、苦しい。目の前の顔が平然としているのが滲んだ視界にも確認できて、そのあまりの違いが悔しかった。
「そうやって慣れないながらも、一生懸命に一途に想ってくれているだろ。それが、たまらなく嬉しいんだよ」
もう一度、軽く触れ合うだけのキスをされて口元を優しく拭ってくれる相手に、大人ってほんとにずるいと心の中だけで呟いた。