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Holiday

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*このお話は7巻ネタバレあります。




瀟洒な白い外観の邸宅の前に、ふたりの人物が姿あらわしで、ふわりと風のように現れた。

ひとりは背が高く、もう一人は相手の肩ほどの背丈しかない。
そしてどちらも同じような、クシャリとした収まりのつかない艶やかな黒髪をして、瞳は深い緑色をしていた。

広大な庭に放された孔雀たちが、美しく羽を広げているのを横目に見ながら、レンガで舗装された道を登っていく。
たどり着いた入り口の豪華で重々しいノッカーを叩くと、すぐに両開きの扉が開かれた。

ギギィーというきしんだように、ゆっくりと開く、扉の動きに我慢できないように、中からひとつの人影が転がるように飛び出してきた。
「アル、ひさしぶり!」
そう言って、玄関に立つ黒髪の少年に抱きついた。

突然の出来事に驚き、相手の重さにひっくり返りそうになりながら、慌てて相手の背中に腕を回して、抱きしめ返した。
「元気にしてた、スコア?」
「うん!」
ふたりして嬉しくてたまらないように、その場でピョンピョンと飛び跳ねる。

「夏休みに入って会ってなかったから、二週間ぶりになるね」
「会えないのがすっごく長かった。寮でずっといっしょだったから、こんな長く会っていないなんて信じられないくらいだよ」
「僕も!僕も!」
「さぁ、上へ行こう!僕の部屋は二階なんだ。今日ここへ来たのははじめてだろ。僕の部屋を紹介するよ」
「本当に?楽しみだ」
「こっち、こっち!」
そのまま二階へと連れ立って走って行こうとする子供に、ハリーは慌てて声をかける。

「アルバス!待ちなさい。まずは挨拶だ。父さんがいつも言っているだろ。きちんとしろって」
「うん、分かった」
黒髪の少年は慌てて引き返してくると、出迎えたドラコの前に立った。

「今日はご招待をどうもありがとうございました」
ペコリと丁寧にお辞儀をする。
顔を上げて、ドラコを見上げる瞳はまるで、新緑のようだ。
アルバスは好奇心が強そうな、利発的な表情を浮かべていて、手足は背丈のわりにはひょろりと長かった。

ドラコは笑みを浮かべ、「気楽に過ごしなさい」とゆっくりとしゃべり、頷く。
そして、淡いブロンドのドラコと瓜二つの、細っそりとした少年が、もう堅苦しい挨拶は終わったとばかりに、アルバスの腕を引っ張る。
まるで子犬がじゃれあうように、ふたりしてバタバタと階段を駆け上がっていった。

その場にひとり残されたハリーは、決まり悪そうに頭を掻く。
「息子を招待してくれてありがとう、マルフォイ。アルはまだ姿あらわしができないから、僕が連れてきたんだけど、こんなに早く5分もしないうちに取り残されるとは、思ってもいなかったよ」
やれやれという表情を浮かべ、困ったような顔で首を振った。

「しかし──、再びマルフォイの屋敷を訪れるなんて、信じられない。それもきっかり20年後だ」
ハリーは声を上げ、珍しそうにグルリとマルフォイ邸のエントランスを見回した。

たくさん壁にかかっている古くて厳しい肖像画のひとつを、ハリーは珍しそうに覗き込む。
中の老人は、ピンと伸びた髭を動かして、胸を反らし不機嫌に咳払いをした。
「――この人は?」
指をさして尋ねてみる。
「わたしの10代前の先祖に当たるらしいが、知っているのか?」
ドラコは少し驚いたように目を見開いた。

「いや、知らないけど、瞳の色がみんな同じだと思って。グレーがかった薄水色は、マルフォイ家の遺伝なのかい?」
「多分そうだろうな。この家の当主になった者に、ラベンダーやはしばみ色の瞳がいた記述は、ひとつもないみたいだし、遺伝の一種だろ」
「純血ってわけだ」
「フン、まぁ、そういうことだ」
ドラコは肩をすくめると、優雅に踵を返して、館の奥へと歩きはじめる。

「よかったら、お茶でもご馳走するが……」
そう言いながらも相手を待たないところが、高慢で、高飛車な、ドラコらしかった。
(ホグワーツの頃とちっとも変わってないじゃないか)
それが面白くて、唇を引き締めて、ハリーは笑い声が漏れそうになるのを我慢した。

早足で当主に追いつくと肩を並べて歩きながら、ハリーは視線を左右にめぐらせる。
「見覚えがあるような、ないような……」
ブツブツと呟いた。

豪華なタペストリー。
銀色に輝いている甲冑。
美術館に展示されていそうな高名な画家の絵画が何枚も、壁にかけられていた。

「ここへ来たのが2回目だから、何か見覚えのあるものがないかなぁと思ったんだけど……」
「何か思い出したのか?」
「いや、全然分からない。あのときは蜂に刺された呪文で、顔がパンパンだったから、瞼がふくれて、視界が半分しか見えなかったからな」

ドラコはすぐに、あのときのハリーの顔を思い出したらしい。
「本当に、君のあのときの顔はなかったぞ。父親から、本物のポッターかどうかを、調べろと言われて、失敗は許されない状況だったのに、君の腫上がった真っ赤な顔を見たら、噴出しそうになった。いったい、何の冗談かと思った。笑い出しそうなのを、必死で我慢したんだ。──まったく、君の膨れ上がった顔のせいで、別の意味で殺されそうになったよ。今、思いだしても、実に忌々しい事件だ」
ドラコはやれやれという感じで首を横に振る。
すると、ハリーは「それでも、あの顔で命拾いしたのは事実だ」と早口に、ムッとした顔で反論した。


作品名:Holiday 作家名:sabure