【かいねこ】春告鳥ノ恋
カイトが旅立ってから、五度目の春ー
玄関前を掃いていたいろはは、鶯の鳴き声に顔を上げる。
「旦那様ー、鶯が鳴いてますよー。いい加減起きて下さーい!」
家の中に声を掛けてから、掃除を再開した。
暖かな日差しが降り注ぎ、時折鶯の鳴き声が響く。
「春ですねえ」
眠気を誘う風に、いろはが一人呟くと、
「そうですね」
後ろからの声に、驚いて飛び上がる。
「ひぁっ!えっ!?あっ!!」
振り向くと、カイトが微笑みながら立っていた。
「いろはさん、ただいま帰りました」
「まだ早いじゃないか」と、ぶつぶつ言いながら玄関先まで出てきた染井は、固く抱き合ういろはとカイトの姿に目を細め、黙って家の中に引き返す。
何処からか、鶯の澄んだ鳴き声が響き渡った。
終わり
作品名:【かいねこ】春告鳥ノ恋 作家名:シャオ