こらぼでほすと 闖入1
それらのデータの確認をしていたハイネは、げんなりしたらしい。アローズでないものは、全てが敵というぐらいの勢いで殺略の限りをしてくれている。民間の集落すら、焼き払うというやり方には、憤りがこみ上げる。なぜ、戦うのか、それは、永遠の問題だろう。
「ご苦労様でした。」
「今夜、キラとアスランに報告することになってるから、俺も席を外すことになるが、ママニャンのフォロー頼めるか? 八戒。」
このまま居座るつもりだったが、報告があるから、一端、店には顔を出さなくてはならない。それが終ったら戻ってくるが、その間、フォローを八戒に頼んでいくところが、じじいーずのハイネらしい過保護さ加減だ。
「こっちは気にしないでください。別に、嫁いびりに来る舅じゃないんだから。」
「じゃあ、頼むわ。それと、せつニャン、来週ぐらいには戻って来ると思う。まだ、未確定だから、ママニャンにはオフレコで。」
「はい、了解です。」
刹那がデータを送ってきたということは、目的は達成したのだろう。エクシア故障の騒ぎがなければ、すでに戻っている時期だ。ちょうどよかったのかもしれない。黒子猫が傍に居てくれれば、親猫の具合はいいし、上司様ご一行の来訪のストレスも軽くなるだろう。
ハイネは居間に戻ると、落ち着かなくて、台所でうろうろしている寺の女房の頬にキスをかまして、出かけていった。
「ちょっくら働いてくるぜ、ママニャン。でも、こっちに戻ってくるから俺の布団、温めといてくれ。」
「はいはい、いってらっしゃい。」
で、寺の女房のほうも慣れたもので、キスなんかぐらいでは怒らなくなった。手をヒラヒラと振って送っていたりする。
「おまえ、ノンケは返上か? 」
間男と女房の戯れに、亭主が茶を啜りつつ、冷静に言葉を吐き出した。
「返上すんなら、あんたにも返上させますよ? だいたい、俺、店の大半のスタッフにキスかまされてんだから、いい加減慣れました。」
寺の女房は、いちいち騒ぐので、店のスタッフがおもしろがって、キスをしていた。そのお陰で、すっかり、野郎同士のキスには慣れてしまった。挨拶だと思えば、そう気にならないというところまで慣れたのだから、いいんだか悪いんだか微妙ではある。
「俺にはしないだろ? 」
「俺はやられてるほうで、やったことはありません。やって欲しいんですか? 三蔵さん。」
「やったら殺す。」
「ほら、そうでしょ? 安心してください。俺もやりたくないから。」
いや、その会話そのものが、すでにおかしいだろう、と、八戒は内心でツッコミだ。どこまでもナチュラルにいちゃこらしやがるのだ。そして、当人たちに自覚はない。慣れって、怖ろしいと八戒が呆れていたら、ハイネが出たのと入れ替わりに、悟空の「ただいまぁー」が、玄関に響き渡った。
作品名:こらぼでほすと 闖入1 作家名:篠義