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日照ラテ粉
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novelistID. 26877
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続合鍵問題タイロンさん

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「よう、邪魔するぜ。
 なんだ?今日はカレシは一緒じゃないのか。」
口元を盛大ににやにやさせながら、大男が部屋に入ってきた。
「・・・タイロン!?」
「いやあ、昨日は初めてこいつが役に立ったなあ。
 おかげで楽しかったよなあ?」
ジグが渡して、その後すっかり忘れていた、例の合鍵を持った手をひらひらさせながら話す。
「・・・・!楽しいわけ、あるか!」
「おっと」
鍵を奪おうと手を伸ばすが、タイロンは握り締めた手を頭の上まで高くあげてしまった。こうなってしまうと背丈の差で、もう鍵まで手が届かない。
「返せ!」
「もうちょっと持ってたっていいだろ?
 ・・・昨日珍しく、いや初めてだな?ここの扉に鍵がかかってんのが見えてよ、こりゃあなんかあるんじゃねえかと思ってこいつを使ってみたら・・・・」
「っいい加減にしろ!」
タイロンは高く腕を持ち上げたまま得意げにしゃべる。
こいつ、昨日部屋に入ってきたのは偶然じゃなく・・・何かあるとわかってて鍵を使ったのか。
自分とファズが夕べあれだけ悩んだのに、本当に腹立たしい。
「ジグっち、そんなに照れるなって。あれくらいのこと、恥ずかしいうちには入らねえぞ?」
「・・・・うるさい。
 恥ずかしいことじゃないなら・・・なんであんたは昨日、こそこそ隠れるようなことしてたんだ。忍び込んで、見つかりそうになったら逃げ出して・・・あんたらしくないじゃないか」
「そりゃー、ジグっち。・・・・そうしたほうがおもしろいと思ったからよ。
 お前ら二人、あの後どうした?さぞかし燃えたろ」
「っ!!」
昨夜。ファズの部屋へ移動した後、くるおしい程の一夜を二人で過ごした。
すぐ側にいるファズの存在が、とても得がたいもののように感じられて。誰にも邪魔されたくない、離れたくないと夢中になってすがりついた。
想いが伝わったかのようにファズも、全身でジグに応え、尽くしてくれた。

―――一瞬のうちに脳裏によぎり、顔を赤らめたジグを見て、タイロンは思ったとおりだ、と声をあげて笑う。
「あーあ、おもしれえなあ。あのジグっちがこんなツラになっちまうなんてな!
 ・・・皆にもみせてやりたくなるな」
「っ!」
「おめえら二人は親友同士、って思ってるやつらばかりだもんな?大騒ぎになるぜきっと」
「おい・・・タイロン」
「さーて、まずはどうすっかなあ」にやにやしながら顎に手をあて、考えるようなポーズをとる。
「誰にも言うな!もし言ったら、」
「おっ、どうするってんだ?」
「くっ・・・!」
二の句が続けられなかった。考えてみれば、怖いものナシのタイロンさんに、脅しなど通用するはずないのだ。たとえランキング一位の腕っぷしで叩きのめしたとしても、いい戦いができたと喜ばれるだけだろう。
しかし・・・こんな悪意あるにやけ面に、土下座などは断じてしたくない。
なんとか頼み込む方法はないか。
なんとか・・・・

「・・・・」納得がいかない。
そもそもどうして自分が下手に出る必要がある?

ジグは勝ち誇った笑みを浮かべるタイロンを下からにらみつけ、静かに言い放つ。
「タイロン。
 前言撤回だ。誰にばらしたっていい。・・・鍵を返す必要もない」
タイロンは目を丸く見開く。
「ジグっち・・・本気か」
「本気だ」タイロンの目をまっすぐ見ながら言う。
「おれは、おれたちは何もおかしいことはしていない」
「・・・やけくそになって物を言うとあとで後悔するぞ」
「後悔なんてしない。絶対にだ」
「・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・ちっ。ああわかったよ。おれっちの負けだ。」
高々と上げていた右手を降ろし、小さく両手を広げて降参のポーズをとった。

「ったく。こんなに早々悟りを開いちまうとはな、
 もうちっと長く楽しめるとおもったのによ・・・」
ぶつぶつ言いながらタイロンは出口へ歩き出す。
ジグから姿が見えなくなる前で立ち止まり、見せつけるように小さな鍵を真上に放り投げ、また手で受け止める。
「本当にこれ、返さなくていいのか?」
「かまわない。いつでも覗きに来い」
「・・・うお」さすがに驚いたような小さな声をあげる。
それ以上返す言葉もなく、タイロンは部屋から出て行った。

最後にまた一つ意趣返しができた爽快感をかみしめていると、別の客が部屋に現れた。
「・・・ファズ!」
「ジグ・・・・今そこでタイロンとすれ違って・・・・
 妙な顔で俺のことをにらんでいったが・・・まさか」
青ざめたファズの顔を見て、先ほどタイロンに告げたことを早くも後悔しそうになった。