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Telephone

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パールホワイトの包装紙に、赤いリボンがかけられた小ぶりの箱を相手に差し出した。

「―――なんだ?」
ドラコは怪訝そうに眉を寄せる。

「何って、プレゼントだよ」
「クリスマスや誕生日でもないのにか?なんでそんなものを、寄こすんだ?」
ハリーは大げさにため息をついた。
「そういうイベントじゃないと、君にプレゼントもできないわけ?贈りたい物が見つかったら気軽に、渡したっていいじゃないか」
そう言ってドラコの手に乗せると、(開けてみて)と視線で合図する。

肩をすくめつつ包みを解いていくと、中から高級そうな黒い小箱が現れた。
ふたを開け、真っ黒で艶やかな物体を取り出すと、それは長方形の形で薄くて、丁度手に収まるくらいの大きさだった。

平べったい物体は、裏側がガラスのようなもので出来ていて、全体がツルツルと滑らかで指ざわりがいい。
見慣れないこれは、多分、魔法界のものではないのだろう。

「――いったい何だ?」
ドラコは不思議そうにそれをじっと見つめる。

ハリーは指を伸ばして、それの上部に、軽く触れた。
途端にパッとガラスの画面が明るくなり、文字が一瞬で現れる。
1から9までの番号と、#などの記号が順序よくキッチリと並んでいた。
またそのガラスに触れると、途端に画面が変わり、文字とアイコンが現れる。
ハリーが触れるたびに、その画面が次々に変化していった。

ドラコはじっとそれを見つめる。
ハリーは嬉しそうにその相手の耳元にささやく。
「携帯電話だ」
「携帯……でんわ?」
ドラコは首をかしげた。
「つまりテレフォンで、電話だよ」
一瞬でドラコの眉が曇る。
不機嫌な顔のまま無造作にそれを後ろも見ずに、容赦なく放り捨てた。
「いらない」

ハリーは慌てて、それに飛びつきキャッチをする。
「せっかくプレゼントしたのに、いきなりなにするんだよ。ドラコ!!」
「フォンとか、電話とか、知らないけど、そんな物いるか!マグル製のものなんか大嫌いだと、ずっと僕は言っているだろ。要らない。必要ないからな!」
ドラコは不機嫌に鼻を鳴らして腕組みをする。

「これ、けっこう高い品物なのに?」
「値段なんか関係ない。マグル製は絶対に持たない。あんな下品なもの」
相手がかなり鼻息が荒いのは仕方ないことだ。

「ああ、わかっているよ。ドラコのマグルアレルギーは相当なものだって、理解しているよ。――これ。ほら、これを見てよ。この自分がかけている眼鏡のフレームも、それと同じブランドなんだ。君も眼鏡をこれに変えたとき、すごく褒めてくれたじゃないか。センスがいいとか言ってくれたのに。忘れちゃったの?それと同じブランドだから。だから――」
ハリーが言葉を重ねても、ドラコは大げさに首を振り、否定する。

「それと、これとは話が別だ。君が何を買っても、身に付けても、一向に気にしないし、センスがよければそれは褒めるさ。──だいたい君は最初っから、着る物に無頓着だったんだからな。3着あれば事が足りるとか豪語していた、どうしようもない性格だったし。金なんかグリンゴッツの3つの地下金庫に、唸るくらい金貨を持っているくせに、その使い方も知らないほど、どうしようもない生活をしていたし。――ハリー、僕に出会うまで君は何にその稼ぎを使っていたんだ?」
言ってみろて、視線で合図する。

「──ええっと……、箒の新製品とか、箒のビンテージ品とか、箒の手入れセットに、箒のカバーとか……」
「そうだ。ものすごかったよな。最初君の家に行ったときは、ここは箒のショールームかと思ったぐらいだ。一部屋だけじゃなくて、それが何部屋もあって、やっとたどりついたベッドルームには、本当にベッドしかなかったし。しかもそのベッドときたら、シングルベッドだったんだよな。あのデカイ部屋にポツンと小さな寝台しかなかったときは、眩暈がして、すぐに思いとどまって、何もなかったことにして、君と別れようと思ったぐらいだ。まさか最初にふたりがしたことは、そのベッドを魔法で大きくしたことなんか、今では笑える出来事だったけど、本当にめったにお目にかかれない貴重な体験だったよ」
ドラコはハハハと乾いた笑い声を上げているが、ちっとも目が笑っていない。


作品名:Telephone 作家名:sabure