Summer Vacation
しかもドラコは、美しくて――、エキセントリックで――、とても魅力的だった──
少々の欠点など、取るに足らないものだと、うっとりとハリーは、恋人を見詰める。
汗に濡れて額に張り付いたブロンドを、ドラコは煩そうに、後ろへと掻き上げる。
ハリーの前で無防備に、着ていたシャツのボタンを何個か外して、襟元を大きく開いた。
服の中の篭った熱気を、開いたシャツのあいだから、逃そうとしているのだろう。
開いた胸元から覗く青白い肌は滑らかで、やわらかく湿っている。
ほほが上気して、こめかみからあごへと、汗の雫が幾筋も滴り落ちていた。
熱を含んだ瞳は重たそうに、何度も瞬きを繰り返している。
ドラコから漂ってくるコロンは、強く汗の匂いが混じり、まるでジャコウのようだ。
その香りはいつも抱き合ったあと、相手の湿った首筋から漂ってくるものと、同じ香りがした。
首筋に鼻先を押し付けて、深く相手の匂いを吸い込み、背中からドラコを抱きしめたまま、ぴったりと寄りそい、眠ることは、何ものにも変えがたいほどだ。
それが許されるならば、一日中だってベッドの中で、そうしていたい。
──いつだって──
ハリーは油断なく辺りに目を配った。
あたりに誰もいないことを確認すると、座っているドラコの上に、ゆっくりと覆いかぶさる。
(――なに?)
暑さにぼんやりとして、いつもより相手の反応が鈍かった。
動きが緩慢になっている。
これ幸いと、ハリーは相手のウエストに手を回して、抱き寄せた。
軽々と持ち上げられて、ドラコの体の半分が、椅子から浮く。
「どうせ、汗にまみれるなら、別の気持ちがいい方法がいいよね。──君も、僕もさ――」
腰にぴったりと下半身を押し付けられて、抱かれたまま、耳元で低くかすれた声で囁かれた。
耳の中へと息を吹き込まれて、ぞくりと背筋を甘い痺れが伝っていく。
ドラコは観念したように、「あ……っ」と声を漏らした。
唇を恋人の首筋に這わせたまま、
「ペニンシュラのスイートへ」
と、ハリーは宣言する。
パチンという音が上がり、空気が揺れる。
次の瞬間ふたりの姿は、白昼夢のようにその場所から一瞬で、消え失せた。
──まるで、魔法のように……
■END■
*午後は眺めのいい、最上階のジャグジーバスで、ふたりしてシャンペンを片手に、イチャイチャして欲しいと願っています。
作品名:Summer Vacation 作家名:sabure