バルカイストに30のお題
自分でも単純だと思う。でも、本当に、それだけのことで……他のことはどうでもいいや、なんて思えてしまう。
ようやく、それを伝える手段を指が思い出した。
打ち込まれたコマンドに、PCが飛び跳ねるのをやめて、にこりと笑みを浮かべる。
「うん。わかってる、バルムンク」
「……カイト、その」
「大丈夫だよ、心配しないで。それと、教えてくれて、ありがとう」
とんとんとん、と飛び跳ねるような足取りで、カイトが歩き出す。
隣にいた白銀のPCを置き去りにするように、赤いPCはタウンの外へ向かって走って、それから、くるりと振り向いた。
「じゃ、行こうか?」
碧色の視線の先で、彼も、笑い返してくれた。
「ああ」
今度は肩を並べて歩き出した二人のPCを、変わらず、タウン中の視線が追いかけてくる。
でも、もう、何故かその視線が、少しも気にならなかった。
作品名:バルカイストに30のお題 作家名:物体もじ。