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【臨帝オンリー】猫がいる生活【サンプル】

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高校入学と共に思い切って上京した。
一人暮らしは初めてだから、やることなすこと初体験のことばかり。掃除洗濯はそこそこ出来るが、料理は実家で夕食の手伝いをしていたくらいだったから、失敗も多かった。バイトであるネットビジネスもまずまずの収入だ。学校の方は幼馴染の正臣がいたし、同じクラスの杏里ちゃんとも仲良くなった。街で新しく知り合いも、友人も増えた。四苦八苦しながらも頑張っていった結果、大抵の事には慣れたし、余裕もできた。
池袋にやってきて一年と少し。気付けば、新しいことで満ち溢れていた日々は、全てが日常となっていた。
別に不満なんてない。ただ、少し物足りなさを感じるだけ。自分は自他共に認める非日常好き。好奇心旺盛な女子高生なのだ。


だからあの日、自分のとった行動は避けられない運命だったんだ。そう、思う。


大型連休のある日。正臣や狩沢達とカラオケに行って、いつもより少し遅くなってしまった帰り道。

帝人は猫を見つけた。

猫といっても成人男性に猫耳がある特殊なタイプで何処の二次元から出てきたんだ!と言わんばかりの存在。以前狩沢達が帝人につけるよう勧めてきた猫耳カチューシャが脳裏に浮かぶ。
(コスプレ……だよね?にしてもあの動きリアル過ぎる……尻尾も作りモノには見えない)
全身を黒い服で揃え、暖かそうなファー付きのコート。整った顔をしたその青年の頭には立派な猫耳が付いており、今の彼の気分を表しているのか、猫耳は頭にぺたりと伏せられていた。
(本物、なのかな。まさか)
遠目では判断できず、帝人は好奇心に任せて青年のいる公園へと足を踏み入れる。一人ブランコに乗る姿は寂しげに見え、それと同時に説明しがたい異様さを放っていた……主に猫耳と尻尾の存在が。

「何してるんですか?」

どう見ても不審人物だが、声をかけてみた。しかし彼は答えない。

「ひとりですか?」

やはり答えず、青年の後ろで耳とお揃いの黒い尻尾がゆらゆらと揺れていた。あの緩やかな動き、やはり本物にしか見えない。
目の前に現れた日常とはかけ離れた存在。
自然と高鳴る鼓動を抑えようと、帝人はごくりと唾を飲み込んだ。

季節は春。日中は暖かいとは言え、やはり夜は気温が下がり、風を遮る物が何もない此処は肌寒く感じた。

何となくだ。本当に何となく寂しそうに見えたから。
別に非日常!とか、面白そう!とか、非日常ktkr!とか思ったわけではない。決して。断じて、だ。

「……僕と一緒に来る?」

そう呟けば、猫はバッと顔を上げ、驚きを露わにしてから……嬉しそうに表情を緩ませ言った。

「にゃー!」
「あ、人間の姿だけど喋らないんだ」


というわけで、帝人はこの日猫を拾った。
ちなみに家に帰ってから確認すると、やはり耳も尻尾もコスプレなんかじゃない本物だった。それが生えているのが子供でも美少女でもない、いい年した大人だというシュールさはあったものの、大興奮で何度も触らせてもらったのは帝人的に当然のことだった。


【拾った日】