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こらぼでほすと 闖入4

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 黒子猫の気は、神仙界のものでもないが、人間のものとも、ちょっと違うものが隠れている。今のところは、それほど表に出ていないが、成長すれば気自体が変りそうな感じだ。人間の気ではない何かだが、捲簾にも天蓬にも、その気の正体はわからない。
「あなたは、三蔵たちのこと、どう思いました? 」
「どうもこうも・・・あれ、完全に夫夫になってるだろ? 」
「でも、ニールも三蔵も、他に大切なものがあるから、どちらも切り捨てるつもりらしいですよ? 」
「あー確かに、三蔵はそうかもしれんな。悟空が一番だろうさ。けど、あいつのあんな穏やかな顔っていうのは、見たことないぞ? 天蓬。」
「僕も、そう思うんですけどね。でも、当人たちは、ずっと添い遂げられるとは考えてもいないらしい。・・・・・ニールは、連れ子が一番で、連れ子たちに何かあれば、そちらに行くつもりだそうです。」
「あの身体でか? 」
「あの身体で、ですよ。だから、それほど生きていられるとは考えてないんです。人間だから、そうなるんでしょうね。」
 人外のものには寿命という考えは希薄だ。無茶をしなければ、相当な年月を生きていられるし、再生されて生き返ることもある。一度しかない短い命なら、どれかひとつに絞るしかない。それは理解できるが、そうではない解決策というものがある。今度の遠征で、悟空の気持ちを確かめて、そこを考えるつもりだったのだが、ニールの存在が三蔵に及ぼす影響というのが、さらに付け加えられた。もし、どちらもが、共に在りたいと思っているなら、そうさせてやるつもりだったのだが、それほど単純なものではないことが判明した。先ほどのニールとの会話で、天蓬も、これは難題だ、と、感じたほどだ。
「全部取っ払ったら、どうか、というのが、わかんねぇーわけだ。」
「というか、どっちも取っ払うつもりはないでしょう。ちびテロリストちゃんたちの動向で、ニールは動くつもりでしょうからね。三蔵も、悟空に何かしらあれば動くでしょう。それは外せない命題です。」
「あいつら自身のことじゃなくて、扶養者のことが一番ってとこが泣かせるな。まあ、いいさ。焦る必要はないだろう。今回は、悟空の考えを確認するだけでもいい。そのうち、それが変化するかもしれん。」
 時間は無限ではないが、それほど切羽詰った状態ではない。悟空が、こちら側に帰るまでの時間は、まだある。三蔵だけなのか、女房も一緒になのか、は、その時間が来るまでに決めればいいことだ。
「ただし、ニールの身体のことは気になりますけどね。ああいう状態の人間が、どれくらい生きていられるのか、そのあたりの問題は残ります。」
「八戒に報告してもらえばいいだろう。あの薬が効かなくなったら、その時に決定してもいい。・・・なあ、天蓬。賭けてもいいが、三蔵は女房を手放さないと思うぞ。」
「連れ子を無視して引っ張ってくるんでしょうね。あの鬼畜破戒僧が、あんなに手をかけているなんて、そういうことだとしか思えません。」
 付き合いも長くなった。三蔵のことは理解しているつもりだ。ある種のカリスマ性を身に着けているが、他人にあまり興味はない。唯一、気にかけているのは悟空だけだったはずだ。仲間として悟浄と八戒は信頼はしているだろうが、信用は完全にはしていない。それほど警戒心の強いはずの坊主が、手の内に囲い込むようにしているのだから、推して知るべしというところだ。口では、なんだかんだ言っていても、その事態になったら、何かしらの反応はするだろう。そこいらは、まだ若い証拠だな、と、捲簾も天蓬も微笑ましく感じる。 
 チャポンと水が動く音がして、天蓬が亭主のほうに背中から雪崩れ込む。亭主のほうも慣れたもので、その身体を受け止める。
「触発されたか? 」
「髪の毛を洗ってください。」
「へーへー洗ってやるよ。ついでに乾かすのも俺がやるんだろ?」
「よくわかってますね。さらに、布団を温めてください。」
「・・・・それは共同作業でもよくないか? 」
「共同作業なんかやったら、三蔵に撃たれるんじゃないですかね。」
「そこまでのことじゃない。」
「途中で止まるわけがないでしょう。やめてください。」
 冗談の掛け合いをして、天蓬が振り返る。相手は、余裕で微笑んでいるが、その視線に、どうぞ、と、視線で返している。
「僕は利己的な性格です。周囲が、どうなろうと僕が満足できる状態であれば、それで良いんです。・・・・だから、悟空が望むなら、そうしますよ、捲簾。」
 悟空が幸せだと思う環境を作るためなら、三蔵とニールの事情なんか一切合切切り捨てて、人間を止めさせるつもりだと語っている。それで、三蔵やニールに恨まれても構わない。悟空にとって、あの二人が必要であるなら、天蓬は、それを優先する。
「どうせ、実行部隊は俺なんだろ? おまえが命じるならやってやるさ。」
「ええ、命令には従ってください。」
「ついでに、俺は、あいつらにおまえと俺の独断だと宣言するぞ。ひとりで罪を被る必要はないだろ。こういうのこそ、夫夫で被れば負担も半分だ。」
 天蓬が命じることに従った、というのが、捲簾には免罪符になる。だが、その免罪符はいらない、と、突っ撥ねた。悟空に対する気持ちは、同じものだからだ。
「バカな亭主ですね。素直に従えば傷は浅くて済むのに。」
「血みどろの女房なんて見たくもないぞ。おまえこそ、バカだろ。」
 ほら、髪の毛を洗うぞ、と、捲簾は浴槽から出て準備をする。天蓬は浴槽の縁に頭を乗せて目を閉じる。意思の確認ができたから、それ以上には、どちらも言い募らない。そういう事態になったら、これで、どちらも思うように動ける。まだ少し先だが、いずれ、時は来るだろう。

作品名:こらぼでほすと 闖入4 作家名:篠義