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こらぼでほすと 闖入4

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「あんまり無茶すると悪化するんじゃないですか? ニール。・・・・とりあえず、そこの着替えをさせて、後で悟空に探してもらいます。先に食事させましょう。空腹で入浴は、目が廻りますからね。」
「ああ、そうですね。・・・刹那、そっちはいいから、自分の食事は自分で運んで来い。」
 がさごそとタンスを物色している刹那に声をかける。手にしていたのは、パジャマだが、それは、どう見ても薄手のものだ。
「今、何時ですか? 」
「十時過ぎですね。」
「刹那、とりあえず、おまえ、風呂の支度してくれないか? お客さんに先に入ってもらうからさ。」
「了解した。」
 上司様たちに入浴してもらっていれば、すぐに坊主とサルが戻って来る時間になるだろう。悟空に服を貸してもらって、それから刹那は入浴させようと手順を変えた。黒子猫は親猫の命令に、すったかたと回廊を駆け下りていった。
「しつけの行き届いたちびテロリストちゃんですね。」
 親猫の命令は絶対なのか、それには逆らわない。あれぐらいの年齢だと、反抗期なんてものかありそうなのに、と、天蓬は微笑ましそうに眺めている。
「礼儀も何もありませんけどね。なかなか、そういうのが身に着かなくて。」
「まあ、テロリストに、それを求めるのも、どうかと僕は思います。・・・あの子は何番目の子供です? 」
「下から二番目です。・・・というか、俺としては、兄貴の気分なんですが、どういうわけか、みんな、俺を母親代わりにしちまうんですよ。そこいらが、すでに一般常識から外れてます。」
「それは、別に構わないでしょう。僕らも、そうですが、『吉祥富貴』に一般常識なんてものはそぐわないものです。」
 そういうもんですかねーとニールは笑いつつ起き上がる。ゆっくりとタンスに近付くと、中を確認して一組だけ用意してあった冬用のパジャマを取り出した。それに、靴下、下着と、自身のカーディガンまで、きっちりセッティングして、そこに置くと戻って横になる。
「その態度が、すでに、『おかん』だと思います。」
「そうですか? あいつの場合、揃えておかないと、とんでもない組み合わせにしちまうから、ついつい手を出しているだけです。それに、寒がりなんですよ、刹那は。中東の生まれだから、暑いのはなんともないんですが、寒いのはからっきしで・・・だから、風邪をひかせないようにしないと。」
 熱砂の国生まれの黒子猫は、寒いのは苦手だ。いつも、ニールがもこもこになるぐらい着せている。
 唐突に、まったく違うことを元帥様は口にした。外面のいい寺の女房には、こういう突発的質問のほうが良さそうだと判断した。
「テロリストに戻りたいですか? ニール。」
「戻れるものなら戻りたいですよ。」
「うちの三蔵を捨てて? 」
「捨てるも何も・・・あの人も、悟空に何かあったら、俺を切り捨てて行く。逆に、俺も刹那に何かあったら同じことです。元から、その約束はしていますから、捨てるとは言いませんよ。」
 そういう意味では、どちらも相手を切り捨てるつもりなのは、先日、確認したばかりだ。平穏であれば、このまま一緒に暮らしているだろうが、それも難しいだろう。組織は、そろそろ再始動する。それ如何によって、ニールの今後も決まるからだ。
「それに、あの人より、俺のほうが早死にする予定ですから、どっちにしろ、見捨てて逝くことになるんじゃないですかね。」
「はい? そんな予定があるんですか? ニール。」
「予定というか、こういう状態の人間ですからね・・・・」
 布団に横になっているニールは、そう言って、おどけたように首を傾げている。雨が降ればダウンするという状態は、普通ではない。早急に悪化しなくても、健康な坊主の寿命に付き合えることはないのは事実だ。
「もし、僕らが、もっと効果のある薬を用意したら、三蔵と添うてくれるんですか? 」
「刹那が生きていてくれれば・・・・いられるかもしれません。」
 テロリストが長生きして老衰になるような年まで生きているというのは難しい。いずれ、刹那も世界からの贖罪を求められる。そうなったら、ニールは刹那たちと一緒に逝くつもりだ。だから、ひと時の平穏だと、三蔵もニールも思っている。どちらにも居心地のいい関係と場所だが、それに固執するつもりはない。
「ニール、三蔵のこと愛してますか? 」
「考えたこともないですね。同居人としては、とても相性はいいと思いますが。」
「あなたたち、傍目には仲睦まじい夫夫なんですけどね? 」
「よく言われます。」
 だから、と言って、ときめいたりしないので、寺の夫夫の関係は、それ以上に進展のしようがない。
「友情関係ってとこですか。」
「うーん、そういうとこなのかなあ。」
「僕には、それ以上に見えますけどね。あなたたち、とっても繋がった関係に思えるんですよ。」
「同居して三年ほど経ちましたから、まあ・・・いろいろとありました。」
 三年とはいうものの、同居期間はもう少し短い。ニールがダウンしていれば、本宅や里へ連行されているからだ。だが、なんていうのか、戻れば、いつも通りな三蔵がいて、なんだかんだと用事を言いつけてくれるので、自然と寺に住んでいる感覚が身に着いた。そういう積み重ねがあってこその関係だ、と、ニールも思う。



 刹那が風呂の準備をして、程なく戻って来た。そして、捲簾が食事を運んでくれて、そこで、黒子猫は、がつがつと空腹を満たす。天蓬たちは、そのまま風呂に入るからと部屋は辞した。
「焦らなくても、メシは逃げない。よく噛んで食え。」
 と、親猫が注意しても、スピードは変らない。空腹を思い出した黒子猫は、そちらに集中している。ものすごいスピードで食い終わると、ようやく人心地ついたのか、お茶に手を出す。
「・・・終ったのか? 」
「ああ、見てきた。それと、あんたの弟も確認してきた。元気だった。」
「・・・そっか・・・」
「白い花を供えてきた。それから、北極も飛んできた。」
「・・うん・・・」
 どうやら、アイルランドにも足を延ばして来たらしい。いろんな場所を放浪して、刹那は少しずつ世界の歪みを確認している。来年には、宇宙へ上がるのだろうか、と、ぼんやりと考えていて、親猫は、そのまま寝てしまった。黒子猫の元気な姿に気が緩んだ証拠だ。くぅーと寝息を立てている親猫の顔を見て、黒子猫も微笑む。そういえば、まだ、ただいまも言ってなかったな、と、黒子猫は思いつつ、食べ終わった食器を持ち上げた。洗い物を片付けて、風呂に入らないと、親猫の横には入れない。タンスの前には、着替え一式が置かれているから、とりあえず、片づけから始めることにした。



 おまえらの出汁の利いた風呂なんか入れるか、と、童子様はおっしゃって一番風呂に入った。そして、二番風呂には夫夫が入る。ここの風呂は広いから、大人が二人で浴槽に浸かっても余裕がある。
「変った気ですね? ちびテロリストちゃんは。」
「ナチュラルな人間とは言い難いな。・・・・あれは、俺たちとも違うが、何かを内包しているんだろうな。」
作品名:こらぼでほすと 闖入4 作家名:篠義