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神月みさか
神月みさか
novelistID. 12163
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一番と、唯一と。

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 平和島静雄は恋をした。
 小学生の頃に抱いた淡い初恋の想いとはかけ離れた、強く強く相手を欲する深い恋を。

 故に、恋を告げた。告白だ。
 相手を己のものとする為に、自らの想いを白状した。

「好きだ。竜ヶ峰。俺の恋人になってくれ」

 唐突に恋を告げられた少年は、大きな瞳を更に見開いて驚愕を示した。
 しかしその瞳には、嫌悪の色も拒絶の影もない。唯純粋に、思いもしなかったことを聞いたと告げている。

 しばしの間を置いた後、少年は言った。

「随分、唐突な申し込みなんですね」
「悪ィな。こーゆーのは慣れてなくてよ」
「いえ、平和島さんらしいので悪くはないですが――」
「――んだよ」

 『が』の後で少々間を持たせ、静雄を焦らした後で、少年は続けた。

「――普通は、そういう申し込みの前に、相手の気持ちの確認をするものなんですよ」
「……そういうモンか?」
「はい。確か、その筈です」

 確かに、『好きだ』の後には『お前はどうだ』と続けて、相手が自分と同じ感情であった場合に『恋人になってくれ』と言う流れになるのが標準的な告白なのかもしれない。
 静雄はなるほどと思ったが、自分には縁のない行動だとも思った。
 相手の気持ちを確認する必要など、この十年程の間は感じたことがなかった。そんなもの、青白い顔色や小刻みに震える身体、決して合わされることのない瞳などだけで充分伝わってきたからだ。

 しかし目の前の少年は、そういった反応を静雄に対して見せたことが一度もない。静雄の暴力に巻き込まれ掛けたときにすら、恐怖の表情を見せることはなかった。

「――だから、惚れちまったんだけどな」
「はい?」
「ん。けど確かにお前の気持ちはわかんねえよな。お前は俺をどう思ってる?」
「格好いいのに可愛らしい、大人の男のひとだと思っています」
「――そりゃ、印象だろ。感情を訊いてんだよ」

 『格好いい』も滅多に言われない言葉だが、『可愛らしい』は小学生のときにすら向けられたことのない言葉だ。
 突っ込みたいことは色々あったが、取り敢えずそれは脇に置いて、静雄は質問の趣旨を明確に訊ねなおした。

 帝人は小首を傾げながら素直に答えた。

「好きですよ。静雄さんのことは」
「――っ、じゃあ――」
「ですが、だからといってすぐに恋人に、ということには、ちょっと……」
「ッ――!」

 一旦舞い上がりかけた気持ちが直後に叩き落される。
 しかしそれも仕方のないことだとは、頭ではわかる。なにしろ自分は男で、しかも平和島静雄だ。こんなものを恋人にしようなどという男はそうそういないだろう。

 だが、振られたからといってあっさり諦められるようならば、そもそも最初から叶わないとわかっている告白などはしていない。
 キレると手に負えなくなる男を怒らせない為だろうか、遠まわしな表現で言われた断りの言葉を、静雄は盾に取って言った。

「――だったらよ、どうすりゃ俺の恋人になる気になれる?」
「どうすりゃ……ですか?」
「おう、俺のことは好きだが、すぐには恋人になれねえんだろ。じゃあどうすりゃなる気になれるんだ?」
「……えっと……」

 少年は視線を泳がせた。その表情は困っていると伝えてくる。
 しかし静雄には逃がす気はなかった。絶対に。
 告白すると決めた時点で、どんな手段を使っても手に入れると決めていたのだ。
 その程度の覚悟は決めなければ、告白などという自爆的な行動には到底踏み切れなかった。

「言えよ。ん?」
「ですが……」
「いいから、言え。なんでも聞いてやる」
「その……」
「んだよ」
「……えと、怒りません、か……?」
「怒らねえし、キレねえよ」
「……でも……」

 どうすれば穏便に断れるのか言葉を捜しているのか、一向に先を口にしない少年に少しイラつくが、切れる程ではない。
 再度強い調子で促すと、少年は気まずそうに視線を彷徨わせた後、

「――では」

 真正面から静雄の瞳を捕らえてゆっくりと条件を述べた。

「僕を一番に優先して下さい」

 それは先程までとはまったく違う、平和島静雄でさえ気圧されるような強い瞳だった。
 静雄は青く輝く瞳に射抜かれたまま口を開いた。

「――どういう、意味だ? 俺は気の多い性質でも器用な方でもねえ。恋人にするっつったら、他の奴に気ィ取られるような真似はしねえぞ」
「はい。わかっています」
「だったら、どういう意味だよ」
「――たとえば」

 感情の波に乏しい、けれども弟のようなものとも違う、少年の声が静かに流れる。

「平和島さんの目の前に、僕と臨也さんが同時に現れた場合、僕だけを見て下さい」
「――」
「臨也さんと争っているとき、僕が声を掛けたら気付いて下さい。臨也さんがどれだけ挑発しても、僕が隣にいるときには無視して下さい」
「――」
「僕は我が侭な人間なんです。僕が傍にいるときに、僕以外の人間を優先するようなひとは、どれだけ好感が持てる人物であっても、恋人にはできません」

 僕は、一番、でなければ許せないんです。

 そう告げる少年に、静雄は心を強く揺さぶられた。
 歓喜した、と言ってもいいだろう。

「――上等だ」

 唸るように呟く静雄の両目は、獲物を目の前にした肉食獣のごとき鋭さで少年を射抜いている。
 静雄からすれば正に、食べて下さいと身を投げ出してきた草食動物にも見えたことだろう。

「俺はなぁ、感情的になっちまうと、他のことがなにも見えなくなっちまうんだ。ムカついたり怒ったりするとよ、場所も状況も全部頭ン中から飛んじまって、とにかくそいつをぶっ飛ばさねえと収まらなくなっちまうんだよ」
「はい。時々、街中でそんな様子を見掛けることがあります」
「だからよ――」

 静雄は身を屈め、獲物に顔を寄せて囁いた。

「惚れちまえば――惚れた相手が俺のものになっちまえば、そいつのことしか見えなくなる。考えられなくなる。どこだろうと、誰がいようと関係なく、そいつだけで全部が埋まっちまう。ノミ蟲だ? ンなくだらねえモンが視界に入る余裕なんざある訳ねえだろ」
「―――」

 息を呑むようにして、揺れる大きな瞳で見上げてくる少年に、退路を断つ為の通告をする。

「それなら、いいんだよな? お前を一番に優先すんなら恋人になるっつったよな? なぁ竜ヶ峰。だったら今から、お前は俺の恋人だ」

 一番でいい、なんて甘い。甘すぎる。その程度で気が済むなんて。
 静雄は心の底から呆れてしまう。
 自分ならばその程度では済まない。そんなことは、ノミ蟲と蔑むあの男を前にした自分を見たことがあるならば、わかるだろうに。

「いいか。俺以外には目を向けんな。優しくすんな。笑い掛けんな。――少なくとも、俺の前では」

 無茶なことを言っている自覚はある。無理なことを言っていることはわかっている。
 けれども、それでも言っておかなければならない。でなければ――自分がなにを仕出かすか、予想できる。

「なるべく俺も寛容でいるように努力はするけどよ、目の前でお前が他の誰かに優しくしてるとこを見て、キレて暴れねえ保障がねえ」

 というよりも、9割以上の高確率でキレることだろう。
作品名:一番と、唯一と。 作家名:神月みさか