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こらぼでほすと 闖入5

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寺はオールセルフサービスが基本なので、自分が使ったものは自分で片付けることになっている。ニールが動ける状態なら、ほぼ、ニールがやってくれるが、ダウンしている場合は、自力である。刹那が洗い物を終る頃に、金蝉が風呂を上がってきた。冷蔵庫からビールを取り出して、食卓の椅子に座る。
「ちび、おまえは人間か? 」
「人間だ。」
「コーディネートされているのか? 」
「いや、されてない。」
「そうか、人間にもいろいろいるんだな。」
 ぐびーと缶ビールを飲んで、童子様は微笑む。変った気が混じっている人間だということは判るのだが、それ以上に、どういう種の気なのか、はっきりしない。まあ、『吉祥富貴』の関係者なら、そういう毛色の変ったのがいてもおかしくはない。
「おまえは人間じゃないのか? 」
 そういう物言いだと、そう問われることになる。くくくく・・・と肩を揺らして、「そうだったら、どうする? 」 と、問い返す。
「・・・俺のおかんに危害を加えないなら、どうでもいい。」
「なるほど、単純明快な回答だ。・・・枠じゃねぇーが、近いとは言っておこう。」
「そうか。」
 刹那は、片づけが終ると、そのまんま台所を出て行こうとする。寺は人の出入りが激しいので、見慣れぬのがいても気にならない。坊主の関係者であるなら、いてもおかしくはないから、そのまんまスルーだ。対して、童子様は悟空の友人に興味がある。
「まあ、待て。ちょっと付き合っていけ。」
 足を止めさせて、缶ビールを二本、冷蔵庫から取り出して、一本を投げる。悟空の話に、たまに、「刹那」という弟分は登場する。それが、これであるなら、少し話してみたいと思った。面倒そうに、刹那は、立ったままで缶ビールのプルトップを開ける。
「悟空と友達なんだろ? 」
「ああ。」
「あいつは、こっちじゃ楽しそうに暮らしているか? 」
「俺は、長くは一緒にいないから、詳しいことはわからないが・・・・楽しいと感じているとは思う。」
「ここには住んでないのか? 」
「俺は、たまに帰ってくるだけだ。留守をしている時は、悟空が、俺のおかんの世話をしてくれている。それについては感謝している。おまえらは、新しい住人か?」
「いや、本山から用事があって出て来ている。一ヶ月もしたら、あちらに戻るから住人ではないな。・・・・おまえは現役テロリストなんだろ? 今は、どこをテロ対象にしているんだ?」
「今は、俺たちが引き起こした世界の変革を確認するために、旅をしている。変革して歪んだものを確認したら、次は、そこを叩くつもりだ。」
「人間は忘却することが得意な生き物だ。歪みは、どんどん増えていくんじゃないのか? おまえたちが引き起こした変革は、すぐに、その歪みに飲み込まれてなかったものになるだろう。それでも続けるのか? 」
「何度でも歪みは破壊する。それが、俺たちの組織の理念だ。」
「人間の一生の時間で終ることではないぞ。」
「わかっている。組織は二百年前から、その理念を受け継いで存続している。俺だけで終るとは思っていない。」
 また気の長いのがいたもんだな、と、童子様は苦笑する。二百年なら、まあ、自分たちだとふた昔前くらいの感覚だが、人間なら世代を何代か繋いでいる。人間にも変ったのがいて、そういうのが、時代時代に存在するのだろう。それが集約して、このちびテロリストたちの組織は存続しているらしい。
「物好きの集団か。おもしろいな。」
「そんな風に揶揄されたのは初めてだ。あんたも変っているな。」
「悟空も変ってるだろ? 」
「どうだろう。変っているとは思わない。」
 刹那にとって、悟空は貴重な組織から外れた友人だ。最初から、刹那のことを友人として付き合ってくれているし、ニールのことも世話してくれている。テロリストだという事実についても、「俺も、いろいろとやってるからな。」 で、済ましている。だから、変っていると思わない。『吉祥富貴』自体が、そういうものの集まりだから、それについて、刹那は気にしたことがない。キラにしても、「僕たちも、ある意味、テロリストみたいなもんだったからね。」 と、普通に言いのけているからだ。
「そうか、変わり者じゃないのか。」
 その言葉に、ほっと安堵する。人間とは、いろいろと違うところがあるから、孤立することもあるのではないか、と、童子様は気にしていたが、そんなものは関係ないらしい。
「三蔵も変わり者じゃないのか? 」
 その問いには、ちびテロリストは、しばし考え込んだ。そして、「よくわからないが、俺のおかんが結婚した相手だから、いい人なんだと思っている。」 と、答えたのには、吹き出した。
「いい人? あれが? おまえたち親子で、同意見か。・・・これはいい。そうか、いい人なのか。」
「当たり前だろう。そうでないなら、うちのおかんが、ここに住んでいる訳がない。虐待も暴行もされていないぞ。」
 きっぱりと言い切られて、童子様も納得する。言動も行動も問題はあるが、理不尽なことはやっていない。そういうことが大嫌いなのも事実だ。
「なるほど、確かに、それはされていないだろう。・・・なあ、ちびテロリスト。もし、三蔵がニールを連れて、本山のほうへ移り住むことになったら、どうする? 」
「どうもしない。本山に住んだら、俺は、本山のほうへ行く。場所ではなくて、ニールが俺の帰る場所だ。」
 ぐぐーっと缶ビールを飲み干して、ちびテロリストは部屋を出て行く。缶ビール一本分を付き合ったから、これでいいだろうということらしい。
 ちょっと驚いて、ちびテロリストを、そのまま見送ってしまった。それから、童子様は肩を震わせる。はっきりとした物言いをする。三蔵と悟空の絆のようなものが、ニールとちびテロリストにもあるのは判った。

・・・・しかし、本山と言っても、人間界じゃないんだが・・・

 神仙界に出入りするのは、人間には容易いことではない。だが、あの様子だと、どういう手を使ってでも、神仙界に圧し入ってくるだろう。それに、ニールや悟空が、それを知ったら助勢もするだろうから、やってこられるはずだ。ただ、時間の問題は存在する。ニールは見た目の年を取らなくなるのに、あのちびテロリストは、確実に年老いていく。それでも、帰ってくると言い張るのかは謎だ。


・・・・いや、そういうもんじゃないのかもしれないな。・・・・

 見た目の年齢なんてもので、引け目を感じたりするような絆ではないのかもしれない。悟空が、五百年待って三蔵と出会った。その時間の差なんて、三蔵も悟空も気にしていない。五百歳以上年上の悟空が、三蔵を、「親父」と、呼んでいるのが、いい証拠だ。

 三蔵と悟空が帰ってきた。そこで、一日延期の話をすると、悟空も三蔵も、延期しなくてもいい、と言う。
「刹那、戻ってきただろ? だから、大丈夫なんだ。それに、トダカさんが、こっちに居候してくれるって言ってたからさ。」
作品名:こらぼでほすと 闖入5 作家名:篠義