春夏秋冬
春を呼ぶこども
前略、はないあずさ。
元気ですか、おれはしにそうです。
たった数行書かれた葉書が二ヶ月に一回の割合で届く。それは様々な国から、その地方特有の風景写真が使われたポストカードだった。裏にはいつも同じ台詞だ。
元気ですか、おれはしにそうです。
汚い字だ。雨に濡れたそれは滲んでいた。
その送り主である田島悠一郎は野球を捨てた。野球の道を捨てたという方が正しいのかもしれない。球団や大学からの誘いも蹴り、田島は飛び出していった。
リュックひとつを背負い、日本を、そして世界を回っているらしい。
おれだけが野球を続けていた。大学に進み、そこで続けている。田島が容易にも手放したものだ。おれはそれに必死になってしがみついている。