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春夏秋冬

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田島が旅立つ日の朝、彼は玄関先に立っていた。
春の日だ。
丁度、一年前になる。
田島は両腕にタンポポを抱え、大きなリュックサックを背負っていた。高校時代からあまり背が伸びなかった彼にしてはすこし大きすぎるものだった。しかし田島は背筋をぴんと張り、言った。
「これが敷き詰められていたそこは、黄色の絨毯のようだった。花井が見たら、泣き出すような景色だった」
そう言ってから、田島は両腕に抱えていたタンポポを放り投げ、大きくわらったのだ。
黄色の花が、降りそそぐ。
ぱらぱら、ぱらぱら、雨粒のように。
またばかなことを、とおれはそのとき思った。そして花たちの向こうにある田島の顔をじっと見ていた。彼は、わらっていた。けれど黄色のそれがすべて降り終わったとき、不意に田島は笑みを消し、静かに言ったのだ。
さよならだ、と。
おれは覚えている。
声も、その蒲公英が降る景色も。
何もかも、目に焼きついていた。
作品名:春夏秋冬 作家名:夏子