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かなや@金谷
かなや@金谷
novelistID. 2154
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【臨帝】Godiva【サンプル】

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「臨也さん……」
「やあ、君がこんなに遅くに来るなんて何かあったのかい帝人君?」
 連絡はあったとはいえ、学生が訪れるには
遅い時間に帝人は息を切らせて臨也の部屋へとやってきた。
「もしかして、またかい?」
 帝人からの連絡は、至極簡潔に今からそちらに向かいますという一言だけだったが、慎重で冷静な帝人が慌てて訪れる目的は一つしかなかった。
 それは今二人を、帝人を悩ませている一つの問題だった。
「はい……」
 椅子に腰掛けたままくるくると回る臨也の前で、帝人は鞄から白い封筒を取り出し手渡した。
「これが今日届いた奴?」
 コクンと小さく頷く帝人を視認してから、臨也は封筒の中味を取り出した。中には数枚の写真が入っていた。どの写真も望遠で撮られたモノで、帝人の姿が隠し取られている。場所は、背景からもこの部屋だと判る。
 帝人は先程からきょろきょろと周囲を意識している。盗撮の主がこの部屋を狙っていることは確かだからだ。そして、この封筒には宛名も、住所も書かれては居ない。つまりは直接帝人の家へと投函されているのだ。全て握られていると言っても過言ではないのだが、犯人からの要求は何一つないまま一ヶ月が経過しようとしていた。
 何枚かの写真は当たり障りのないモノで、この部屋で帝人が寛いでいるモノだった。そのうち数枚は、肩を臨也に抱かれているモノや、臨也の膝の上に戯れに座らせたものだ。もじもじと恥ずかしがっていた愛らしい仕草が、直ぐに脳裏に蘇ってくる写真だった。
「これ、いつのかな?」
 見慣れない一枚の写真は帝人一人が写っているモノだったが、その姿に臨也は見覚えがなかった。
「これは……、この前臨也さんが急用が出来たって言った時です……」
「ああ、そんなこともあったね」
 あの日、帝人を呼び出したはいいが、急な仕事が入り臨也は暫く外出しなくてはならなかった。確か、シャワーも浴びてというところだったと思う。だから、この写真に写っている帝人はバスローブを羽織っている。その姿でこの臨也が座っている椅子に腰を掛けているのは、なかなか面白い光景だ。望遠で撮られた写真では表情まで判断できないが、面白くなさそうな顔をしているのだろう。なにか悪戯でもしてやろうと、臨也のデスクを漁っているのかもしれない。
 この黒革張り椅子に腰掛けた帝人の写真の次は、窓辺に置いてあるソファに腰を降ろしてる帝人の姿が映っていた
。帝人は奥の応接セットよりも、この窓辺のソファーの方を気に入っている。カウチのようによく寝そべっていることがある。奥の方の椅子ではふかふか過ぎて眠りにくいと、漏らしていたことがあった。
 写真ではその帝人の横には臨也のコートが無造作に置かれていた。
「俺のコートがある……」
「出かける直前で違うコートに替えたんですよ。覚えてないんですか? 臨也さん」
「そうだったっけ……」
 次の写真はその臨也のコートを握っている帝人が映っていた。
「片付けてあったね。そういえば、ありがとう、帝人君」
「臨也さんはだらしないから……」
 そう恥ずかしげに頬を染めて帝人は口を窄めている。
「あっ、そういう話じゃなくて……」
 写真を取ろうと帝人が手を伸ばすと、臨也は高くその写真わ掲げた。
「どうしたの急に?」
「もういいじゃないですか、また撮られていったってだけで……」
「見られたくないモノでも映ってるのかな?」
 そう言って捲った次の写真には、臨也のコートを抱き締めながら自慰に耽る帝人の姿が映っていた。
「あれ? これはどういうことかな? 帝人君」
「止めてください」
 奪おうと手を帝人は伸ばすが、身長で敵わない帝人に届くわけもなく、ただ手だけがばさばさと空を泳いでいる。
「俺が居なくて淋しくて、興奮しちゃったのかな?」
「違います」
 写真を机に投げると、ばらばらと机に投げ出された写真には帝人の痴態が写っていた。その痴態をあれほど隠したがっていた帝人だっだか、今はもう興味はないのか視線すら遣ることはない。そもそも、臨也に見せたくなければその写真だけ抜いてくれば良かったのだ。手渡した時から、どこかで臨也に見て欲しいという思いがあったのだろう。
「確か、あの日は…… 帰ってきたにここでふてくされて寝てたよね帝人君。あれは拗ねてたんじゃなくて……」
 写真見て臨也も思い出していた。確か、あの日はあのソファーの上で帝人は眠っていた。あの時は拗ねただけかと思っていたが、写真と話を見る限りそうではないかことが判る。淡い虚脱感と自責の念と羞恥とで、帝人は顔を上げることが出来なかったのだろう。あの日は、もう嫌だと駄々を捏ねて結局そのままベッドに運んだだけだった。性的な接触が無い夜もたまには良いと思っていたが、帝人は自分が一度達していることを気付かれたくなかったのだろう。
「もう、どうでもいいことでしょう、それは……」
 幼さの残る柔らかい頬を膨らませて抗議する姿は、ますますその幼さを強調させるだけだとは思うが、その頬に触れようと伸ばした手を払いのけて帝人は続けた。
「そんなことよりも、盗撮されてるんですよ。僕の住所はバレてますし……」
 力強い主張で始まった言葉の最後は消え入りそうになっている。口に出している最中に、恐怖が込み上げてきたのだろう。自らを抱き締める形で、腕を組んだその掌が震えていた。
「でも何も相手は言ってこないし、要求もないじゃないか?」
「そうですけど……」
 犯人からの要求は何一つ無く、ただ写真だけが送られてくるのだ。
「なら実害はないよね」
「そんなのこれからあるかもしれないじゃないですか?」
 逆にただ送られてくると言うことが怖いのだ。要求という、相手の意志が、意図が感じられないということが怖ろしいのだ。相手が見えないと言うことは、対策も立てられず後手にしか回れず、対処に追われるだけというのは性には合わない。黒幕体質である臨也の方が最も嫌であるばなのに、彼はなんの対策も立ててないように思える。そのらしくない、いや、この状況を愉しんでいる姿は確かに臨也らしいと言える。
「その時は、俺と一緒に住めばいいよ」
 机の上で掌を組みその上に顎を乗せて、涼しげな表情で臨也は語る。
「なんですか、それ。解決方法になってませんよ」
 此処での生活を盗撮されているというのに、此処に住んだとしても解決方法にはならない。
「ここじゃない部屋で二人で住めばいいじゃないか、ね」
「ね。って…………」
 その臨也の提案は確かに対処にはなるが、問題の解決にはならない気がするのだ。犯人の意図が見えないことが、一番の問題たど帝人は思うのだ。
「それに、案外さ…… 帝人君のファンなのかもよ」
「ファンですか?」
 仮にファンだとすれば、それが一番問題あるのではないかと思う。誰かが、他の誰かが自分を好きだということに、臨也は何も感じないのか、まるで興味のない態度が帝人は気になるのだ。まるで、嫉妬されることを望んでいるような、そんな自分らしくない思いに駆られている。
「そう、いつも帝人君の姿を見て興奮してるんじゃないかな? それなら俺の方がヤバイよね~」
 また俺、刺されちゃうかもね~。と、軽々しく臨也は口にだすが、帝人は大きく机を叩いた。