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これだから

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「ちょっと休憩しませんか」
佐隈りん子が声をかけてきた。
部屋の中には段ボールがたくさん置かれている。
引っ越してきたばかりなのだ。
まえの事務所は天使に場所を知られてしまったので、それまでとは違う町に事務所を開くことにしたのだった。
ビルの三階すべてが芥辺探偵事務所である。
今、芥辺と佐隈がいるのは、来客の対応もする探偵事務所の要となる部屋だ。
「そうだな」
芥辺は佐隈に向かってうなずいた。
手に持っていた本をガラス戸つきの本棚に並べると、自分のデスクに向かう。
一方。
「じゃあ、お茶をいれますね」
佐隈はそう告げ、去っていった。
台所に行ったのだろう。
芥辺は自分のデスクのそばまで行き、けれどもイスには座らず、窓ガラスの向こうを眺める。
外は夕景。
徐々に夜が近づいている。
事務所にはアザゼルもベルゼブブもいない。魔界に帰ったらしい。
堂珍光太郎は芥辺に命令された偽グリモア作りのためにグシオンつきで出かけている。
つまり、今、事務所には、芥辺と佐隈、ふたりきりだ。
別段めずらしいことではない。
光太郎を引き取るまでは、悪魔を召喚せず、客が来なければ、事務所で佐隈とふたりきりという状態があたりまえだった。
ふと、人の気配を感じて振り返る。
佐隈がこの部屋にもどってきたのだ。
その手は、湯飲みがふたつ載った盆を持っている。
近くまで来ると、湯飲みをひとつ、芥辺のデスクに置いた。
「これで安心ですね」
顔に穏やかな笑みを浮かべて、佐隈が言った。
「なにが」
「新しい町に引っ越してきたから、天使に狙われません」
「油断は禁物だ。天使はいつも悪魔を探している」
「そうですね。でも、居場所を知られているのよりは安心です」
佐隈は明るい。
いつも威圧的な雰囲気を漂わせている芥辺をまえにしても平気なのだ。
危機意識が薄いほうだと感じる。
そのせいか、悪魔が身近にいることにも、あっさりなじんだ。
作品名:これだから 作家名:hujio