From you
大学構内でたまに見かける、白と黒の斑の猫は実は由緒正しい神社の飼い猫の末裔で、斑様と言う。その猫に貢物をすると願い事を叶えてくれる。特に恋愛に対する効き目は抜群である。
そんな噂が学生間で流行り、幾つものカップルが斑様への参拝により成就されたという事実が校内を駆け巡ると、僕の所へ仲介を頼みに来る女性は少なくなった。それでもかなり頻繁に、先輩への取り次ぎを求めて僕に声をかける女子学生はいる。以前のように追い回されるようなことは無くなったが。
先輩は今さら真面目に取り合う必要はないよと僕に言うが、基本的に彼女たちからの告白を断らない、どんな女性でも即了承する。それと同じくらい破局も早い。
僕は時折、きまぐれに日替わりの彼女のどこを好きになったのですかと先輩に聞く。
するとその度に先輩は少しだけ考える仕草をして、「そう言うことを聞くのは野暮だよ」と言って笑う。
いつもは意地悪く歪む唇が諦めたように緩む、先輩のその笑顔が僕は一等好きだった。