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缶ジュース、君と一缶

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 とっても嬉しそうな顔を浮かべたサーベハラの姿を今でも鮮明に思い出せることに驚きつつも、いつの間にか今までに忘れていた、胸の奥が暖かくなっている感じを思い出して微笑んでいるスライの顔を、隣のベンチに座っていたラージュが前のめりになって覗き込み、満足そうに頷くとスライの座っているベンチに缶ジュースを置いた。

音で我に返り、缶ジュースを掴み、周りを見渡すと遠くでラージュが同じ缶ジュースを手に持ち、それをスライに向かって振りながら基地の方に帰って行った。
それを見てスライは手を振り返して、ラージュが見えなくなると、再び缶ジュースに意識を戻した。

「……温くなってる」

それは、スライの心の闇を振り払う為の、賭けだったのだろう。
暗闇の記憶を抜け出す時に、一番不安だったのは言い出したラージュで、ずっと二つの缶ジュースを握りしめていた……。




 これからは、過去の話も笑ってできるようになっていくのかもしれない。
そんな想像をしながら、スライは基地の方へ歩いて行った。
右手に缶ジュース、心に暖かさ、頭に懐かしい風景の続きを描きながら。
温くなった缶ジュースを開ける音が静かな公園に鳴った。


「ここに来て、良かった」
作品名:缶ジュース、君と一缶 作家名:イコル