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缶ジュース、君と一缶

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 庭、と名称がついたとても広い、草原に木がそびえ立つ。
その木陰で静かに本を読んでいる少女が一人。
「姫、またここに居たんですか?」
「……サーベハラ」
声をかけられてスライが目線を上にあげると、溜息をついて安心や呆れなどが混じった微笑みを浮かべる少年が彼女の前に立っている。

「あら、もう見つかってしまったの?」
意地悪そうな笑みを浮かべると、少年は少し泣き声で腕を上下させた。
「見つかってしまったの? じゃないですよ!僕らがどれほど探したと思っているんですか!」
「はいはい、わかりました。戻ればいいのでしょう?」
本を閉じ、彼を見て更に不敵な笑みを浮かべるスライを見て、また顔を赤くする。
「じゃなくてですねぇ! 少しは反省してくださいよもう! 毎回毎回……」

うんうんと自分で頭を上下させるサーベハラがふと前を見ると、スライの姿は忽然と消え、遠くで笑っている。
「あぁっ! もう姫ー……!!!!」
「ふふ……早くしないと門を閉めてしまいますよ?」
「……姫ー……」

溜息をついて歩いていこうとして、はっと気づく。
城の城門を閉められてしまったら、入れる場所など、裏口ぐらいしかないだろうが、ただの使用人のサーベハラはそんな裏口なんて知らない、おそらくとても分かり難い場所にあるのだろう。
顔が青ざめた。彼女なら、やりかねない。何しろ姫だから。そしてそういう人だから。
「姫ェェっ!!! やめてくださいよっ!!!」
彼の叫び声も虚しく、門は大きな音を立てて閉じる。
その場に、真っ白な灰と化した一匹のサンドを残して。


一方、当の門を閉めた姫様は、久し振りに全力疾走をしたことで息を切らしながら、窓に体を近づけて少しだけ顔を出し、外の様子を伺った。
「はぁ……はぁ……、ふふ。」
予想以上に、門のすぐ正面で白くなって放心状態になっている使用人を見て笑いを堪えられなくなり、手で口を押さえていると突然すぐ後ろから明るい声がかかった。

「あらぁ〜……? 姫様、サーベハラ入れなくしちゃったんですかぁ〜?」
一瞬驚いて肩を震わすが、それはよく聞きなれた声だったので、驚いてしまったことに溜息を一つつき、後ろを振り向いた。
そこにはとても見慣れたにっこりと笑うメイドの姿。
「サーベントですか……、驚きましたわ」
「あら、ごめんなさぁい……驚かすつもりは無かったのですがぁ、あまりにも姫様が楽しそうだったのでぇ〜……」
サーベントはゆっくり一言ずつ頭を傾けながらのんびりと話す。

人によってはサーベントの話し方は無礼だとか、苛立つなどと言う者も居るが、スライはいつもニコニコ笑うサーベントが好きだった。

小さい頃からメイドとして寂しい時も嬉しい時も傍に居てくれ、姫と言うより、一人の女の子として扱ってくれた年上のお姉さん。現在も若々しく、年齢が不詳なナックラーのままだ。
そういえばいつの日か、サーベントに進化しないのか聞いたことがあった気がするが、なんて言われただろうか。確か笑って誤魔化された覚えがある、いつもそうだったな……。
なんということを思い出していたが、サーベントにもう一度問われたので、スライは元の話に戻った。

まもなく白い灰から復活し、必死に門に話しかけるサーベハラを窓から見て、スライとサーベントはしばしの間、笑い転げていた。




「笑いごとじゃないんです!」
涙目で未だに笑い続けている二人を追いかけながら、サーベハラは言った。
「サーベハラはドジね〜……普通はそこ、ダッシュで追いかけるわよぉ〜……」
「そ、そんなこと言っても!」
サーベントの言葉に反論しようとすると、突然スライが軽い足取りで一つ二つステップを踏み静止し、サーベハラに向きなおった。

「今度は、走る私より早く前にやってきて、しっかりとエスコートしてくださいね。素敵な騎士様?」

あら、と口に手を当てて嬉しそうな顔をするサーベントと微笑みを浮かべるスライを交互に見て、頭に疑問符を浮かべたが、サーベントに一言付け加えられて、使用人と化していた長年下っ端門番は、一気に目を輝かせて、はい!と頷いた。



「姫様はぁ、あなたを認めてくれたのよぉ〜! ……姫様専属の護衛騎士として、ね?」




作品名:缶ジュース、君と一缶 作家名:イコル