【Secretシリーズ 5 】 後日談
1.
「――で、また帰って来ちゃいました」
エヘッという感じで、ハリーが頭をかいた。
仲間のみんなはあんぐりと口を開けて、驚いた顔で、ふたりを見つめている。
お昼ごろ、ハリーは新しくなった隠れ家に、嬉しそうに笑いながら帰宅した。
もちろんとなりには、ドラコがいて、ハリーはひどく上機嫌な笑顔だ。
鼻歌でも歌いだしそうな勢いでニコニコと笑って、みんなに集合の合図を送ると、全員がわらわらと大広間に集まってきた。
その真ん中で、ドラコが逃げないように腕をしっかりつかんで、ハリーは今までの成り行きを、みんなの前でベラベラと説明をしていく。
根掘り葉掘り、詳しく、しかも、のろけるような甘い言葉まで、ちりばめて──
ドラコはいたたまれない様子で、居心地悪そうに、うつむいたままだ。
一通り聞き終わると、「つまり……」とゴホン!と、ロンが咳をして話を続ける。
「つまり、君たちは行って、ただ帰って来ただけなのか?往復にまる2日もかけて?」
「そうだ」とハリーは頷いた。
「それじゃまるで、ただの旅行じゃないか!」
ハリーはそのロンの言葉に、飛び上がらんばかりに喜ぶ。
「そーそー、そうなんだっ!旅行っていうよりもっと──、甘い、スイートな感じかな?なんていうのか……、ハニーじゃなくて、うーん……、ああ、そうだ!ハネムーンだよ!気分は新婚旅行っ!もー、帰りは楽しくってさー。ドラコったら一人でほうき乗るがイヤだって言ってさー。だから僕たち、いっしょのほうきで二人乗りしたから、スピードがでなくて。でも、しょうがないよね。ドラコに無理させたのは僕なんだし……」
ハリーは、やに下がって、ニヤニヤと思い出し笑いをする。
ドラコはもう我慢の限界だった。
耳まで真っ赤な表情のまま、ハリーの後頭部を思いっきり張り倒す。
「黙れっ!このバカ!」
容赦のない一撃だ。
ハリーはへらへら笑って、それでもへこたれない。
「それで、ドラコのご両親に会えたついでに、僕たちの結婚の許可をいただいたということです!」
「『です!』じゃないだろ!『です!』じゃない、ふざけるな!僕は男だっ!なんであれが結婚の許可になるんだよ!?おまえとなんか、絶対に結婚なんかしないっ!」
「ええ゛ーっ!愛し合っているんだから、結婚してくれよー」
「あれは男女でするもんだ」
「古ーい!いつも時代の話だよ!今は結婚できるよ!マグルの世界では当たり前だよ。こっちがダメなら向こうでしよう。大切にするから!」
「絶対に、いやだっ!」
「だってもう君はあの家には帰れないんだから、僕と家族になろうよ」
本当は「夫婦になろう」と言いたかったのだが、ドラコが承知するはずなかったので、あえて、言葉を変えて口説く。
ドラコの瞳が少しだけ動いた。
何かを言いかけようと口を開いたが、まわりにたくさんの人がいることを思い出して、ドラコはかぶりを振る。
キッと相手をにらみつけた。
「冗談は顔だけにしろっ!」
「あっ、傷つくなー。君は本当に恥ずかしがり屋さんだなー」
ハリーは相手が、割と脈ありなのを見抜いて、余裕で笑っている。
ふたりが言い争っているのを、あきれた顔でメンバーは見ていた。
ハリーには幸せになって欲しかったが、こんなにも『幸せバカ』になるとは、思ってもいなかったのだろう。
そして、あのドラコがハリーに負けずに、堂々とやり返している。
しかも、怒ったり、真っ赤になったりして、実は表現が豊かであったことも、はじめて知った。
「──なんていうか、ふたりで勝手にやってろ!、だよね?」
ロンはハーマイオニーに同意を求める。
「確かにね」と彼女は頷いた。
でも、ハーマイオニーには、もっと確かめたいことがあった。
「ちょっとお取り込み中のところをいいかしら、ハリー。わたしのお気に入りのブランケットのことなんだけど?昨日までなかったのに、今朝ね、なぜかわたしの部屋に戻っていたの。――分かっているわよね、ハリー?あれは、わたしの一番のお気に入りだってことは?」
ハリーの笑顔が一瞬で引きつる。
(助けて!)とドラコに目配せをしたが、あっさりとドラコは視線を外した。
彼は一度、ハーマイオニーの逆鱗に触れて、ひどい目にあっているので、知らんぷりを決め込んだのだ。
ハリーの恋人はつれなかった。
じりじりとハーマイオニーが、笑っていない瞳で近づいてくる。
恐怖だ。
かなりのホラーにしかならない。
この静かに怒っている彼女を相手にするくらいなら、闇の帝王を倒したほうが、100倍は簡単なような気がする。
あまりの恐怖に思考が横滑りをして、現実を受け止めることを拒否し、勝手にハリーの頭は妄想を始める。
(とりあえずこの難関を潜り抜けたら、ドラコと部屋に戻ろう。そして、ドラコとキスをして……、いっしょにお風呂に入って……。もし相手が嫌がっても入るぞ!絶対にドラコのからだは僕が洗うんだ。リンスは薔薇の香りでいいのかな?それともすっきりとしたミント系なのかな?もちろんバスから上がったら、僕がふかふかのバスローブを着せてあげて、椅子に座らして、やさしく髪を櫛でといて……)
(――――それから。それから。やっぱり、ドラコとキスしよう。――――何度も)
夢心地のままうっとりと微笑んだ。
ハーマイオニーの容赦ない尋問と、鋭く問い詰める言葉も、どこ吹く風だ。
「ちょっと、ハリー。ちゃんと聞いているの、あなたは?!」
「……うん」
曖昧な顔でコクリと頷き、それがまた彼女の逆鱗に触れたらしい。
ハーマイオニーのハリーを正す声が一段と大きくなった。
それが部屋いっぱいに広がっていく。
ロンやほかのメンバー達はほうほうの体で、部屋から逃げ出した。
そして、一人残されたハリーは大人しく、彼女の前で頭を垂れる。
――――きっと、あと一時間はそのまま彼女の説教を聞くことになるだろう。
「――で、また帰って来ちゃいました」
エヘッという感じで、ハリーが頭をかいた。
仲間のみんなはあんぐりと口を開けて、驚いた顔で、ふたりを見つめている。
お昼ごろ、ハリーは新しくなった隠れ家に、嬉しそうに笑いながら帰宅した。
もちろんとなりには、ドラコがいて、ハリーはひどく上機嫌な笑顔だ。
鼻歌でも歌いだしそうな勢いでニコニコと笑って、みんなに集合の合図を送ると、全員がわらわらと大広間に集まってきた。
その真ん中で、ドラコが逃げないように腕をしっかりつかんで、ハリーは今までの成り行きを、みんなの前でベラベラと説明をしていく。
根掘り葉掘り、詳しく、しかも、のろけるような甘い言葉まで、ちりばめて──
ドラコはいたたまれない様子で、居心地悪そうに、うつむいたままだ。
一通り聞き終わると、「つまり……」とゴホン!と、ロンが咳をして話を続ける。
「つまり、君たちは行って、ただ帰って来ただけなのか?往復にまる2日もかけて?」
「そうだ」とハリーは頷いた。
「それじゃまるで、ただの旅行じゃないか!」
ハリーはそのロンの言葉に、飛び上がらんばかりに喜ぶ。
「そーそー、そうなんだっ!旅行っていうよりもっと──、甘い、スイートな感じかな?なんていうのか……、ハニーじゃなくて、うーん……、ああ、そうだ!ハネムーンだよ!気分は新婚旅行っ!もー、帰りは楽しくってさー。ドラコったら一人でほうき乗るがイヤだって言ってさー。だから僕たち、いっしょのほうきで二人乗りしたから、スピードがでなくて。でも、しょうがないよね。ドラコに無理させたのは僕なんだし……」
ハリーは、やに下がって、ニヤニヤと思い出し笑いをする。
ドラコはもう我慢の限界だった。
耳まで真っ赤な表情のまま、ハリーの後頭部を思いっきり張り倒す。
「黙れっ!このバカ!」
容赦のない一撃だ。
ハリーはへらへら笑って、それでもへこたれない。
「それで、ドラコのご両親に会えたついでに、僕たちの結婚の許可をいただいたということです!」
「『です!』じゃないだろ!『です!』じゃない、ふざけるな!僕は男だっ!なんであれが結婚の許可になるんだよ!?おまえとなんか、絶対に結婚なんかしないっ!」
「ええ゛ーっ!愛し合っているんだから、結婚してくれよー」
「あれは男女でするもんだ」
「古ーい!いつも時代の話だよ!今は結婚できるよ!マグルの世界では当たり前だよ。こっちがダメなら向こうでしよう。大切にするから!」
「絶対に、いやだっ!」
「だってもう君はあの家には帰れないんだから、僕と家族になろうよ」
本当は「夫婦になろう」と言いたかったのだが、ドラコが承知するはずなかったので、あえて、言葉を変えて口説く。
ドラコの瞳が少しだけ動いた。
何かを言いかけようと口を開いたが、まわりにたくさんの人がいることを思い出して、ドラコはかぶりを振る。
キッと相手をにらみつけた。
「冗談は顔だけにしろっ!」
「あっ、傷つくなー。君は本当に恥ずかしがり屋さんだなー」
ハリーは相手が、割と脈ありなのを見抜いて、余裕で笑っている。
ふたりが言い争っているのを、あきれた顔でメンバーは見ていた。
ハリーには幸せになって欲しかったが、こんなにも『幸せバカ』になるとは、思ってもいなかったのだろう。
そして、あのドラコがハリーに負けずに、堂々とやり返している。
しかも、怒ったり、真っ赤になったりして、実は表現が豊かであったことも、はじめて知った。
「──なんていうか、ふたりで勝手にやってろ!、だよね?」
ロンはハーマイオニーに同意を求める。
「確かにね」と彼女は頷いた。
でも、ハーマイオニーには、もっと確かめたいことがあった。
「ちょっとお取り込み中のところをいいかしら、ハリー。わたしのお気に入りのブランケットのことなんだけど?昨日までなかったのに、今朝ね、なぜかわたしの部屋に戻っていたの。――分かっているわよね、ハリー?あれは、わたしの一番のお気に入りだってことは?」
ハリーの笑顔が一瞬で引きつる。
(助けて!)とドラコに目配せをしたが、あっさりとドラコは視線を外した。
彼は一度、ハーマイオニーの逆鱗に触れて、ひどい目にあっているので、知らんぷりを決め込んだのだ。
ハリーの恋人はつれなかった。
じりじりとハーマイオニーが、笑っていない瞳で近づいてくる。
恐怖だ。
かなりのホラーにしかならない。
この静かに怒っている彼女を相手にするくらいなら、闇の帝王を倒したほうが、100倍は簡単なような気がする。
あまりの恐怖に思考が横滑りをして、現実を受け止めることを拒否し、勝手にハリーの頭は妄想を始める。
(とりあえずこの難関を潜り抜けたら、ドラコと部屋に戻ろう。そして、ドラコとキスをして……、いっしょにお風呂に入って……。もし相手が嫌がっても入るぞ!絶対にドラコのからだは僕が洗うんだ。リンスは薔薇の香りでいいのかな?それともすっきりとしたミント系なのかな?もちろんバスから上がったら、僕がふかふかのバスローブを着せてあげて、椅子に座らして、やさしく髪を櫛でといて……)
(――――それから。それから。やっぱり、ドラコとキスしよう。――――何度も)
夢心地のままうっとりと微笑んだ。
ハーマイオニーの容赦ない尋問と、鋭く問い詰める言葉も、どこ吹く風だ。
「ちょっと、ハリー。ちゃんと聞いているの、あなたは?!」
「……うん」
曖昧な顔でコクリと頷き、それがまた彼女の逆鱗に触れたらしい。
ハーマイオニーのハリーを正す声が一段と大きくなった。
それが部屋いっぱいに広がっていく。
ロンやほかのメンバー達はほうほうの体で、部屋から逃げ出した。
そして、一人残されたハリーは大人しく、彼女の前で頭を垂れる。
――――きっと、あと一時間はそのまま彼女の説教を聞くことになるだろう。
作品名:【Secretシリーズ 5 】 後日談 作家名:sabure