こらぼでほすと 闖入8
「おまえも、大きくなったな? 」
「金蝉、それ、俺に言うの、おかしくね? 俺、三蔵より長く生きてるのにさ。」
「俺よりは年下だ。俺が言うのに問題はない。」
「そりゃそうだろうけどさ。」
「・・・・俺は、おまえのお陰で幸せなものを貰った。たぶん、三蔵も、そうだろう。だから、おまえの願うことは叶えてやりたいと思う。捲簾と天蓬も、そうだ。だから、俺たちに遠慮はするな。それが保護者の役目だ。」
役目というよりは、それが幸せなことだ、と、金蝉たちは知ってしまった。だから、それを失くすことだけはしたくない。一人にはしない。五百年も孤独に生きた悟空だから、二度と、そんなことはしたくない。そのためなら、もう一度、暴れてもいい。今度は、三蔵たちが居るから、後は任せてゆっくりと再生を待つことができる。
「そういうことなら、明日は一緒に観覧車に乗ろうぜ、金蝉。ついでに、三蔵も誘ってさ。」
童子様と坊主は、遊園地では、専らベンチで読書タイムなんてことになって、遊具に乗ってくれない。たまには付き合え、と、悟空がねだれば、金蝉も頬を綻ばせる。
「そんなことぐらいなら、お安い御用だ。三蔵に命じてやるから、ジェットコースターにも乗せろ。」
「だから、金蝉も乗れって、俺は言ってんの。」
「・・・スピードのあるヤツは勘弁してくれ。」
「わかってる。だから、観覧車って言ってんの。となりに遊園地あるんだ。明日は、そこな? 」
「付き合ってやるよ。」
「なんか、みんなで旅行っていうのもいいな。俺、こういうの初めてだから、すっげぇ嬉しい。」
「なるべく降りてくるようにする。」
「たまにはでいいぜ。」
「まあな、言い訳作るのが面倒だから、たまに、だ。」
全員揃って食い倒れ旅行なんてものは初めてだ。目的がないから、あっちへふらふら、こっちへふらふらしていられる。戦う必要もないし、殺気もない。だから、気楽で能天気に遊んでいる。それも全員が楽しんでいるので、悟空にしても楽しい。
「たまに、な? 今度は、もっと西とか行こうぜ。その頃には、刹那も合流できるだろうし、それならママも一緒だ。あ、フェルトたちも来られたら、もっと騒がしくて楽しいだろうな。」
実現できるかどうかは、ちと怪しい計画だが、夢を見るのは勝手だ。刹那たちが無事に戻ったら、その時はニールも元気になってくれる。と、考えて、悟空は、ポンと手を叩いた。
「あ、そうか。金蝉、やっぱ、ママにも桃食わせよう。そうでないと、一緒に旅行できねぇーや。」
そう、ニールは移動が出来ない。今のままなら、刹那が無事でも、それは無理だ。それなら、手っ取り早く桃でも食わせて元気にさせればいい。それを聞いて、金蝉も笑い出した。とても悟空らしい意見だったからだ。
作品名:こらぼでほすと 闖入8 作家名:篠義