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エミヤさん

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あるところに、とてもやさしいしょうねんがいました
そのしょうねんは エミヤさんといいます

エミヤさんはちょっとかわった おとこのこです
ちょっとかわった そう、 まほうつかいだったのです

エミヤさんは かんがえました
「このまほうで、みんながしあわせになれないかな」
そして けついします
「ぼくは、せいぎのみかたになりたい」



エミヤさんは ひたすらがんばってつよくなりました
かなしんでいるひとをたすけたい、えがおをみたい
ただ それだけをのぞんで がんばりつづけました

たすけながら エミヤさんはくるしみます
なんでぜんぶをたすけられないのだろう
おおくのひとをたすけるのに ぎせいしゃがでてしまうのだろう
すくいたい すくいたいのに なぜぜんぶのひとをすくえないのだろう



あるひ ひげきがおこりました
エミヤさんのちからでは たすけることができないひげきです
エミヤさんはいのりました
「どうかこのたくさんのひとびとをすくわせてほしい」
そのいのりは “せかい”にとどきます
『あなたがしんだあとのたましいを わたしをまもるものとしていただきます よいですね?』
エミヤさんはよろこびました
それでこのたくさんのひとをすくえるなら
そして“せかいをまもるもの”なら、それもせいぎのみかただろうと

エミヤさんは よりおおきなちからをてにいれ
ひげきから たくさんのひとをすくうことができました



そしてエミヤさんは いちばんだいじなものをすくえなかったのです
いちばんだいじなもの それはじぶんです

じぶんをたくさんきずつけながら たくさんのひとをたすけます
なんのみかえりももとめず たすけて たすけて たすけつづけます



いつのひか たすけられたひとのなかに
エミヤさんはオソロシイものだと かんがえるひとがあらわれました
“じぶんをかえりみず なんのみかえりももとめない あくにたちむかう つよいひと”
“あく とはなんだろう いつかわたしもそのあくのように たおされてしまうのではないか”
しだいにエミヤさんをこわがるひとは ふえていきました

そう、かなしいことに にんげんは
りかいできないものは おそろしいものなのです

エミヤさんはたすけたひとに うらぎられ きずをおいました
エミヤさんはたすけたひとに こわがられ きずをおいました



そして
エミヤさんは おきてしまったせんそうを とめようと がんばってがんばって
しにそうになりながらも なんとかせんそうをとめることができました
なのに エミヤさんをおそれたひとびとは
“せんそうをおこしたのはエミヤさんだ”といいはじめます
からだいっぱい きずをおったエミヤさんは
ひとびとに とらえられます
そう せんそうをおこした あくにんとして

エミヤさんは しけいになりました
たすけたひとびとに うらぎられながらも けしてうらまず
さいごまで
「どうかみんながしあわせでありますように」
とほほえみ いのちをおとします


しんでしまったエミヤさんのたましいは
“せかい”につながれました
“せかいのしゅごしゃ”となったのです

それでもエミヤさんは いちばんだいじなものをすくえなかったのです
いちばんだいじなもの それはじぶんです

エミヤさんは“せかいのしゅごしゃ”は
みんなをすくえるせいぎのみかただとおもっていました

ですがそれはちがったのです
“せかいのしゅごしゃ”
それは、とりかえしのつかないひげきがおきようとするとき
そのげんいんを はいじょする かなしいものでした
そう ひとびとをたすけたかったエミヤさんは
たすけたいひとびとを たくさん たくさん ころさなければならない
“せかいのしゅごしゃ”になってしまったのです

エミヤさんはくるしみます
「じぶんはこんなことのために しゅごしゃになったのではない」
エミヤさんはかなしみます
「ただわたしは ひとびとの えがおをみたかっただけなのに」
エミヤさんはなげきます
「なぜ ひとのみにくいすがたを みせられつづけるのか」
エミヤさんのこころはひびわれはじめます
「すくいたい すくいたいのに なぜ ころさなければ なぜ」
エミヤさんはくるいはじめます
「ああ、しゅごしゃになるまえの じぶんをころせれば」

作品名:エミヤさん 作家名:ふもった