さくべーですよ!
「さくま様」
ジイは言う。
「せっかく魔界に来られたのですから、いろいろと見てまわられたらどうですか?」
「ああ、いいですね」
明るく佐隈は答えた。
まるで観光地にでも来たようだとベルゼブブは佐隈の様子を見て思った。
そんなベルゼブブのほうを、ジイは向く。
「優一様」
「なんだ」
「さくま様をご案内されてはいかがでしょう?」
「……わかった」
魔界観光に佐隈は乗り気だ。だれかが案内しなければならないだろう。
案内役としては自分が最適、いや、他の者にこの役目を譲りたくない。
佐隈の魔界観光そのものを却下するという選択肢を、ベルゼブブは無視した。
その理由は、佐隈を案内して、ふたりで魔界を見てまわるのは楽しそうだと思ったからだ。
まるで。
デート、だ。
などと思っていることは顔には出さないようにする。
「それでは、さくまさん、参りましょうか」
「はい」
そして、ふたり同時に歩きだした。
ベルゼブブと佐隈がふたりで魔界のあちらこちらを訪ねているところは、多くの悪魔に目撃され、噂になった。
あの人間の娘が優一坊ちゃんの相手らしい、と。