二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

座敷童子の静雄君 1

INDEX|12ページ/12ページ|

前のページ
 

「確かに血ならルビーを連想しますよね。でも、ルビーとサファイアの石って、色が違うけれど石の構成って同じなんですよ。お婆ちゃんらしい天邪鬼というか。………ああ、お婆ちゃんの目の色だぁ……、……お婆ちゃん……」


目を細めて、愛しそうに何度も石を指の腹で擦る。
心がチワワな男は、滅茶苦茶居た堪れなくなった。
もし、これが幽のプレゼントで、たった一個しかなく、しかも元の二年後に戻る手段に必要な道具でなければ、『ばばぁの形見でお前が持っていろ』と、即座に差し出したかもしれない。


「しずおくん、私ね、先祖がえりという事もあって、生まれつき人を見ただけで異種族婚の血統を見抜く能力が備わってるんです。また小さい頃はお馬鹿で何も知らなかったから、あの人は『狐』が入ってるだの『犬』が混じってるだの、『鴉』だの得意げに皆に言いまくってしまって。
ご先祖に何が混じっていたって、今を生きている本人は無自覚なのに馬鹿ですよね。
結局、気持ち悪い事ばかり言う、『嘘つき娘』呼ばわりされて、物凄く虐められる事になりました。しかもここは閉鎖的な田舎だから、えへへ………」
ほろほろと、涙が零れていく。

言葉を濁しても、鈍感な静雄にだって判る。
只でさえ妬ましい旧家のお嬢様が気狂いなんて、田舎じゃ格好の噂の餌だ。
春休みに入ったって、帝人には友達から遊びの誘いメール一本来ないし、きっと今も影でこそこそ虐めは続いているのだろう。

「……私、ずっとお婆ちゃんに守られて、大事にされてた……。お婆ちゃんがやっと逝けたのは嬉しいけど、やっぱり寂しいです……」
「……みかろ、……に、仲間、いない……の?」
「仲良い幼馴染に『正臣』っていう、もろに蛇神の血を先祖がえりで、人を惹きつけるカリスマを持っていた楽しい子がいたんですが、二年前に都会に引っ越してしまって。それからはずっと一人でした。あっちこっちに人間でない血が混ざっている人は結構いるんですけど、自分で自覚できるぐらい力が強い人は本当に極稀で」

静雄の目がぎらりと光った。
長年の自分自身の謎を、今、彼女が解いてくれるかもしれない。
「みかろ、俺は?」

勢い良く自分自身を指差し見上げる彼を、少女はきょとんと不思議そうに大きな蒼い目で見下ろしてきた。
「しずおくんは座敷童子様でしょ?」
「何の血? 俺、何の血ある?」
「だから、しずおくんは霊体なので、判らないんですよ」
「は?」
「いくら私でも、肉体が無いと……。ごめんなさい……」
(……俺、今、透けてねぇよな……)

まじまじと自分の手の指を眺めてみる。
全然今まで気がつかなかった。
自分が幽霊になってこっちに来ていたなんて。
ならあのピカチュウの絆創膏が、本体の指に巻いてあったのは何でだよ?
メシだって普通に食ってるし、帝人にだって触れられる。
訳わかんねぇ!!

「現実世界に普通に具現化できるぐらい、魂の力が強いから、きっとしずおくんの遠いご先祖さまは伝説クラスの物の怪だったんでしょうねぇ」
(うれしかねぇよ!!)
黒龍とその眷属の黒蛇も霊体だったし、白龍ばばぁだってそうだったから、まぁ普通の生活が送れるのがアリなのは認めるが、祖が伝説クラスってどんな化け物だよおい!!

「しずおくんが生きていて、一緒に私と成長できたら、私、もしかしてしずおくんのお嫁さんにして貰えたかもしれませんねぇ」
(人を勝手に殺すんじゃねぇ!!)

少ない言葉で反論する気力も、最早ない。
帝人の膝の上で虚ろな目になりつつ、小学校時代の辞典を読み耽った頃を思い出した。

【座敷童子】、この項目ページも無理やり頭に詰め込んだなぁ。
確か、幼くして命を落とした子供の霊で、住み着きゃ富貴をもたらし繁栄するけど、逃げられればその家は即没落する、結構人騒がせな妖怪だ。

そういや数年前、座敷童子が良く出没するって評判で大人気な旅館が火事で燃えたってニュースをリアルにTVで見た事があった。
あの旅館、あれからどうなったんだろ?
燃える前は予約でも数年待ち当たり前だったけど、まだ営業してんのか?
全く聞かなくなったけど。


ああ、現実逃避している場合じゃねぇ。
今、座敷童子と勘違いされてるのは自分だ。
竜ヶ峰家に、富貴をもたらす力なんて、期待されたって俺にはねぇ。

「ああ、心配しないでください。別に私、幸運とか金運なんて、全くしずおくんに求めてませんから」
顔が強張り、どんどん青ざめていった顔色からあっさり見透かし、帝人があわあわ頭を撫でてくれる。

「ただ、私が一緒にいたいんです。ここに居ていいんですから。子供が遠慮なんかしないで。私とずうっと一緒に暮らしましょう、ね♪」

(ちょっと待て。もしかして俺、行き場の無い【家なき子】と勘違いされてねぇかぁぁぁぁ!!)


それで散々今まで引き止められていたのかと、すとんと腑に落ちた。
勿論、帝人自身が寂しいっていう感情も多々あるだろうが、それ以上に可哀想な子と思われていたらしい。
(……もう好きにしやがれ……)
どうせ帰る手立てもねぇし、口だってうまくまわらねぇ。

精神的な疲れでぐったりきた静雄の体を、帝人が湯当たりしたと勘違いして大騒動になるのはそれから数十秒後の事。

作品名:座敷童子の静雄君 1 作家名:みかる