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Our Song

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 栄口の写真を欲しがる人は結局誰だったのかというと、実は誰でもなかったのだった。
 あの女子は栄口が落とした携帯を拾い、職員室へ届けたことを伝えたいだけだったが、写真の依頼で忙しくて、要件を水谷へ言付けすることまで気が回らなかったらしい。
 栄口とともに階段から下りてきた水谷が三度目にその女子と会ったとき、意を決して「栄口ってこいつだよ」と告げたら、携帯のことを話された。
 つまり水谷が勝手に勘違いして走り回っていただけだった。あやふやな情報で写真屋だと断定した泉も泉だが、その場でじっと事の成り行きを見守る余裕が水谷にはなかった。
 でもこれで良かったのかもしれない。水谷は思う。走って転んで、喚いて泣いて、たくさん格好悪いことをしたからこそ、得られたものがあった気がした。
「ずっと屋上いたから腹減ったー……」
「オレはクレープ二個食べた」
「二個も食ったんだ」
「おいしかったよ」
「クレープ食いたいけど、一個は多いんだよな、甘ったるくて無理」
「半分食おうか?」
「それもいいかもなぁ」
 そう笑った栄口の隣に、水谷はいる。
作品名:Our Song 作家名:さはら