二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

雪のピアス

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 



時々不安に飲み込まれることが何度かあって…。
その不安に飲み込まれ、戻れなくなる日がきっと…遠くはないと思うのも事実。





腕の中にすっぽりと入っているアツヤは…そろそろ眠たくなって来ているんだろうか?
うつらうつらと黄色の瞳が閉じそうになっている。
それにつられて自分も小さく欠伸をすれば振り向いてからかうように笑う。
それに冗談で怒りながら更に抱きしめると悪態つきながら頬を赤らませて抵抗をし始める。
それがどれだけ可愛いか気付いているんだろうか?
気付かなくても良いけれど…。
こんなに抱き合って冗談言い合って喧嘩して…なのにやっぱり不安はどこか隅の方に存在している…。

本来…存在しない…出来ない…
そんなコイツが居る。

(詳しいことは聞いてないけどな)

兄である士郎の身体に二つの人格…士郎とアツヤ…があるって訳。

「晴矢ー?どーかしたか?」
「んー…いやーちいせーなぁーって?」
「んなっ!!うるせぇーなー!士郎に言うぞ!!」
「は?おぃ!アイツには言うなよな!!」

とか言って起きてるんじゃないだろうな?
士郎の方は苦手で仕方ない。
笑顔で近づいて来て口を開けば『アツヤに近付かないで』と
普段とは想像できないような表情で。
それに対して俺も毎回の如く抵抗?反論はするものの…
当の本人が兄貴大好き…だもんなー…。
それにしても…最近…
会う回数自体が減ってるな。
元々、会うのすら難しい関係だから仕方ない…か。

「……はいはい」

呆れながら返事を返して、また腕の中へと入って近くにあった雑誌を開いて目を通している。
眠たくなくなったのか?と思いながら俺はアツヤの肩に額をつけて腕の力を少しだけ込めて目を閉じた。





次に目を覚ましたら…
目の前から消えていることなんて
無いと願って。













それが…多分…三週間も経ってないくらい前。

今現在。
目の前には一番会いたくない人物。
俺に向けるような表情は無く普段見せている表情でも無く。
いうなれば淡々とした…そんな表情で。
しかも…いつもしている筈のマフラーは無くて…
それが余計…俺を不機嫌にさせ、嫌な予感しかしなかった…。

「…珍しいな……なんか用かよ…?」
「うん…少しね。本当は来たく無かったんだけど…これ、渡さなくちゃアツヤに怒られる気がしたから…はい」

手を引かれて掌に置かれたのは一つの茶色の紙袋。
口は折ってテープで端だけ止められていて付箋が付いていてそこには『晴矢』と書かれてあった。
俺?
何だと思って開けてみれば雪の結晶の飾りが付いたピアスが一組。
これには…心辺りがあった…。
なんでコイツがもって来るんだ?
本人が直接来れば良いだけの話なのに。

「………アツヤ……は?」
「……」

その質問に答える代わりに眉間にシワが寄って辛そうな表情に変わった…。
それだけで何で来ないのか、マフラーが無いのか…コイツがこんな表情をしているのか…。
嫌でも分かった。
それに対して誰が悪いとか、そんなのどこにも無いけれど…
いつか来ると思ってた事が来るとこんなにも…
どうしようもない気持ちになるなんて…。

「…………じゃあ…僕はこれで……」
「……おぅ…」

扉を開けて去っていく姿を見送って扉が閉まったのを確認してそこを後にして部屋へと向かった。
机の上にその袋を置いて近くにあったクッションへとダイブした。
暫くしてのろのろと手を伸ばして紙袋をとって中身のピアスを掌に乗せて眺めた後に握りしめた。

(……俺に…だったのか…)

間違いなく…あの時言ってたやつだなんて確認して…














あの後
目が覚めて腕はまだ腰に回っている状態で
心底安心した。
消えてなかったと……。
杞憂だったか…なんて柄にも無くそんな言葉が出て来て。
ふと見れば雑誌を広げたまま眉間にシワが寄って…る?

「何してんだよ」
「あ…いや……なんでもねー」
「…………買いてーのか?」

広げた頁に載っていたのはアクセサリーの写真。
その頁を見たままでめくる様子も無く…見ているだけだったから…
あぁ…そう言うことかと勝手に解釈して言葉を紡いだ。
それに見事なまでに反応して思いっきり俺の方に顔を向けた…。
眉間にシワを寄せて目を見開いて…頬は紅潮して…可愛い反応してくれるよなー
ついでに“んな訳ねぇーだろ!”とでも言いた気に口がぱくぱくと…

「ぶっ…ははは!!んな顔すんなよ!あーおもしれぇー」
「なっ!!てめっ!んなに笑うんじゃねーよ!」

さっき以上に顔真っ赤にさせて身体をこっちに向けて照れ隠しなのか、ばしばしと頭や身体を叩いて…
もちろん痛いんだけど…な…
目の前にいるコイツの表情が面白過ぎるし
可愛いのでそれ所じゃ無い。

「あぁー笑った…で?どれ見てたんだよ?」
「笑っといて聞くか?……………これ」

雑誌を持ち出して来てさっきまで見てた頁を開いて、その中の一つを指さす。
その指先には雪の結晶がモチーフのピアス。
何で?
別に開けているわけでもないし開ける予定なんてこれっぽちも無い。
只…コイツに、このモチーフは合ってるななんて思いながら値段に目をうつした…。

「……2500……円?」
「あー……うん……少し…高いから…」

(あぁ…。だから、皺寄せてた訳な。)

それを確認すると…また皺寄せて小さく唸る。
別に自分に買いたいんだったら構わないだろう?とは思うものの
アツヤだけの身体じゃ無いからこんなにも悩んでるんだよなー。
自分の身体だったのなら…悩みはするかもしれないけど…自分の考えで決められるのに…
そう思いふと近くにあった雑誌を手に取った。
そこにも同じくアクセサリーが並んでいてアツヤの見ているのよりは…格安か…。
暫くその雑誌をめくっているとある写真が目に止まった。

「なぁーアツヤ?これは?デザイン同じだけど少し安いぜ?」
「うー…仕方ねーそっちで良いか…」
「でもさー…何で?」

“ひみつ!”と口許に指を立てて声を出さないで呟いた。
それが異様に…艶っぽいと言うか…
哀しそうな目をして居たというか…
何とも言えない表情だったから、思わずその手を引いて唇を重ねた。

数分して離せば何が起きたのか分からないアツヤと何をしたのか理解できてない自分がいて…
何がなんだか分からなくなった…
暫く沈黙していた空気を破ったのは、堪えられなくなった自分だった。

「ぁー…て言うか…それ、買ってやろうか…」
「は…?」

(いやー…何言ってるんだよっ!!!!)

普通この状況で言わないだろう!なんて心の中で突っ込み違う事に言い直そうとするよりも先に少し伏せ目がちに小さくアツヤがフルフルと首を横に振った。
そっか…何て返せば小さく“ごめん”と…
それに正直驚いたけど…そんな事よりも…

(キスしてこんな事言って……この状況がかなり恥ずかしい)

先刻の自分の行動を思い出して恥ずかしくなりながら撃沈していると
服の裾を引っ張っているアツヤと目があった。
普段そんな事しないから一体何なんだ!
なんて口から出そうになるも、ぐっと堪えて

「どうかしたかー?」
「…あのさ…ありがと、な」
作品名:雪のピアス 作家名:霞蓮城