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ロマサガ3 カタリナ編2

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「それはどうも。私の名はカタリナ=ラウランよ。さ、ご挨拶は済んだわ。不快だから覗き込むのはやめて頂戴」

 腕を組んで相手が引っ込むのを待つが、しかしポールは身を引かなかった。

「はは、つれない返事だねぇ。・・・カタリナ嬢といえば、ロアーヌの花たるモニカ姫に仕える美貌の懐刀じゃないか。まさかこんなところでお会いできるとは光栄だね」

 ポールの軽口に、しかしカタリナは無言で返す。流石にポールもこれ以上軽口を言う気にはなれないのか、冷や汗を一筋たらすと再び肩をすくめた。先ほどもそうだがつくづく器用な男だ。

「・・・OK,わかったよ。俺ってばとことんいい女には縁がないんだな。・・・それはともかく、お宅、あれだろう?ゴドウィン卿の謀反の煽りを喰ったんだろ?」
「!?・・・囚人風情が、いやに情勢に詳しいわね」

 まさか一介の囚人にまでこの話が広がっているとは。まだゴドウィン達がこの宮廷で行動を起こしてからは男の言うとおりならば二日しかたっていない。そもそもにしてその時点で既に地下牢にいるはずのこの男が、謀反の黒幕の名前まで知っていること自体がおかしい。

「これでもシャバにいたころは、耳は良くってね。噂話はちらほら入って来てたんだよ。謀反の計画なら、結構前からあったみたいだぜ?」
「・・・・・・」

 呆れたものだ。
 何に呆れたのかといえば、囚人すら知っているような事実をこの自分がつい数日前まで知らなかったということに、である。それだけ自分が平和にかまけていたことに幾分憤慨したくなるが、今ここでそうしても仕方がない。

「ま、心配はいらないって。お宅のところのミカエル候は間違いなく名君だ。ゴドウィン卿では勝てないよ」
「・・・いやに確信しているじゃない・・・?根拠でもあるのかしら?」

 確信たっぷりに話すポールに、カタリナは疑問符を投げかける。先ほどより若干その声音を和らげてあげたのは、勿論ミカエルを褒め称えたからに他ならない。なかなかわきまえている男である。

「ここにきたのは俺もつい最近なんだが、それまではちょい訳ありで盗賊団員やっててな。この周辺の情勢だの裏話だのはしっかり買っていたのさ。それと照らし合わせるだけでも、勝敗は明らかだし・・・それに」

 言葉の途中でポールは視線をカタリナの顔から、足元に置いてあるタロットカードに移した。

「さっきまでそいつで戦の先見、やってたろ?その結果は何度繰り返しても、ミカエル候の勝利に他ならなかった」

 にやりと笑ってみせるポール。この男、いつから見ていたのだろうか。

「・・・ふふ、言うじゃないの。まぁ、私も同じ考えよ」

 気を良くしたカタリナが笑顔で答えると、ポールはそれにあわせて再び笑った。

「お、やっぱり別嬪さんには笑顔が似合うね・・・ま、ミカエル候には借りがあるからな。俺もミカエル候の勝利を願っているだけさ」
「・・・借り?」

 手前の軽口は無視して、ポールのその後の言葉に再び疑問符を浮かべるカタリナ。どう考えても一介の盗賊風情とロアーヌ侯爵であるミカエルには接点が見当たらない。

「・・・俺は盗賊団家業に身を落としていたが、一応訳ありってことでな・・・元々は俺もその一団に捕まった被害者ってくちだったのさ。しかし普通ならそんなことは関係なく処罰されるだろう?・・・それをあろう事かミカエル候は兵に命じて俺に事情を問いただし、今の事情を汲んだ上で短期間の拘留刑に止めてくださったんだよ。しがない盗賊団員の言い訳を聞いて、ばっちりそれの裏までとったそうだ。正直信じられない事態だよ。俺は名君ってもんをはじめて実感したね」

 あくまでも冗談風味にしゃべるポール。しかしその言葉には嘘偽りの響きが無いことが、なんとなくカタリナにも分かった。

「・・・そう。それは貴方も不憫だったわね。事が終われば早々に酌量もあることでしょう」

 そういってカタリナは再び地面に座り込んだ。立ちながら上を向いて話すのに疲れたのだ。

「ま、ここまで厚遇にしてもらっているんだ。まったり待つさ。・・・とはいえ暇なものはどうしようもなくてな。話し相手に飢えている所に思わぬ別嬪さんの登場とくれば・・・俺の気持ちも分かるだろ?」

 今日三度目の肩すくめをみたカタリナは、不覚にもくすくすと笑い出してしまった。