ふわふわと
その日もひらひらスカート躍らせて頼まれもののケーキを手にして帰り道。
欲しかった服も買えて上機嫌だから、
「アレルヤ?アレルヤじゃないかっ?」
だから、これはいわゆる運命・・・かもしれない。
嬉しさと同時に苦いものが込み上げる様な・・・そんな運命。
声をかけてきたのはスーツ姿の茶髪の男。
見覚えがあるような・・・ないようなそんな男。
そんな男にアレルヤは困ったように首を傾げて思案する。
「え・・・とぉ・・・」
「忘れちまったか?高校で一緒だったろ?」
にこっと笑う顔におぼろげに重なるのは記憶の錯覚か・・・。
青年よりも年若い・・・同じように笑う少年の・・・。
「・・・ニール?」
「! ああ、そうだよニールだ。久しぶりだな」
名前とともに思い出したのにホッとしてアレルヤは微笑む。
「久しぶりだね、ニール」
ニールは確かに奴の言うとおりアレルヤと同じ高校を共にしていた友人と言ってもいい仲だった。
・・・友人、なだけだったのかは俺の知るところではないが・・・。
ただ・・・年の離れた俺ともよく遊んでくれたのも思い出した。
『可愛い恋人さん達だこと』
そう言われた時の、アレルヤとニールの顔まで思い出してしまいあの頃と同じく胸は少し痛む。
「よかったらお茶でもどうだ?」
そんな痛みに当然気づくわけもなくニールは笑っている。
「ナンパですか?ニール」
アレルヤは、ちょっと恥らうように上目遣いでそう聞く。
満更でもないような顔で。
それに焦ったように手を振るニールの頬はほんのりと赤い。
「いやっ、そういうわけじゃ・・・っ。・・・や、そう・・・かもしれない」
バツが悪そうに頬をかく癖は昔から変わっていないと知り、痛みを見ない振りをした。
「いいですよ。お茶だけなら」
そう言えば嬉しそうに表情が変わる。
まるで大きな犬のように。
そういう所も変わらないな。