ふわふわと
「ただいま」
すこし疲れたように体と心が重い。
「おかえり」
エプロン姿で出迎えてくれるのは、・・・俺の憧れで理想のアレルヤ。
玄関に置かれた鏡にはよく似た少女が二人だけ。
「・・・頼まれたケーキ買ってきた」
「ありがと!ハレルヤ」
ふわふわ柔らかい、アレルヤが抱きつくのは姉のとよく似た服を着た弟。
そう、いつしか俺はアレルヤに憧れる余り、アレルヤのような服を着るようになっていた。
べつに女装したいわけでも女になりたいわけでもないはずのに、だ。
そしてアレルヤはそんな俺を受け入れてくれている。
ああ・・・どうしてこうなった原因を今まで忘れられていたのだろうか。
『可愛い恋人さん達だこと』
そう言われた時の二人を見て胸が痛んだ。
だって、幼い俺にもとてもお似合いに見えたから。
俺も・・・アレルヤみたいになれたら、言ってもらえるだろうか?
ニールと、まるで恋人同士のようだと。
「はい。ハレルヤはいつも通りお砂糖三杯ね」
「あ、あんがと・・・。
・・・あれ、アレルヤ・・・コーヒー・・・」
「うん、久しぶりに飲みたくなってね」
アレルヤのコーヒーは黒いまま。
そうだった、ミルクも砂糖も入らなかったんだ。
ニールが引っ越して行ってから飲まなくなっていたので忘れていた。
もしかして・・・?
(まさか・・・な)
いつもは甘いはずのコーヒーがその時は苦く感じた。
大丈夫。きっと二度目はないから・・・。