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【あの花SS】十年越しの花火の前に【10話】

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―ゆきあつ―



どうして俺じゃなかったんだろうと、ずっとそればかり考えている。
確かに俺は大人しい子供だった。
だけど、外見も、性格も、賢さだって、あいつに負けてなかったはずだ。
誰よりも透明で、白いワンピースが似合っていて、甘い匂いがした、めんま。
俺の淡い初恋は、見事に全て、宿海に掻っ攫われていった。


白い花の髪飾りは、きっとめんまに似合うだろうと思った。
いつから考えていたかわからない。
いつの間にか、俺の頭の中はめんまで一杯で、寝ても覚めてもめんまが脳裏を離れなかった。


彼女は特別製だった。
母親が白人なのだという。
田舎の垢抜けない子供に混ざって、色素の薄い硝子細工のような顔形はひどく浮いていた。
出る杭を打つ日本文化において、そんな存在はいじめの対象になりそうなものだが、彼女はそうはならなかった。
他人と違うことを意にも介さず、底抜けに明るく、天真爛漫に振舞っていたからだ。
めんまは、誰と比べられることもない「唯一」の存在だった。
いつだって他人と競争して、勝つことでしか存在証明できなかった俺とは、別次元にいるのだった。
めんまは、俺から見たら神に近かった。


今から思えば、神に近づこうだなんて愚の骨頂だ。
宿海を追いかけて走って行った日、俺は神に捧げものをしようとした。


「ぼくの大好きな、めんまに」


差し出した髪飾りと俺の魂は、山の中に置き去りにされてしまった。
愚かだったんだ。
俺の心はいつまで経っても還って来ない。
俺は神に選ばれなかった。
現に今、彼女の亡霊は、シャーマンとして選ばれた宿海の元にいるのだという。


ふざけるなよ。


俺は努力で、実力で今の地位を勝ち取ったんだ。
県内随一の進学校。スポーツは一通りこなせるし、女からもてているのも知っている。
ここまで来るのにどれほどの汗と涙が流れたことか。
それを、なんだかよくわからない「才能」なんて尺度で、努力もしない宿海に負けてたまるか。


この花火が打ち上がれば、めんまは宿海の元から解放されるのだという。
なあ、めんま、終わりにしよう。
どんなに努力しても俺のことを見てくれないのなら、せめて思い出になってくれ。
いつまでも劣等感を与え続けるのはやめてくれないか。
俺の神様。
決して手の届かない神様。
せめて、誰からも平等な距離から見守っていてくれ。