こんなかんじ2
遠くから聴こえるメルヒェンとブラウの愛の歌声。
くしゃりと歪む顔、碧い瞳から透明の雫が流れ頬をつたい雪の上に落ちる。
愛おしそうに薔薇に口づけをした後、イドルフリートはその薔薇の華をぐしゃりと握りしめた。
深紅の花弁が一枚、また一枚と冷たい雪の上へと散ってゆく。
悲しみと絶望で淀んでいた瞳に狂気と衝動が光り、碧い瞳は復讐に燃えあがった。
あらん限りの憎しみや怨みを、今はこの場にいないメルヒェンとブラウに向け
イドルフリートは暗雲に包まれた暗い空に向かって咆えた。
「これほどの辱めを決して許しはしない…!
きっと今に私を裏切った今日という日を呪うだろう!
私の願いを聞き入れず、私に背いたこの日を……!!」
復讐と衝動の歌声はオペラ座の屋上からパリの街中へと響き渡る。
今、ファントムの復讐劇は幕を開けた。