こらぼでほすと 闖入11
せっかくだから、キラと悟空の歌と踊りを披露する。送り出しなのだから、派手にやろうとカラオケを用意する。
「ママ、これを。」
ちゃっかりと歌姫様は、親猫の横に陣取って、アルコール中和剤を飲ませている。
「ラクス、さっきの、どういう意味だ? 」
「ママが、お寺の奥様として合格だ、と、いうことです。お気になさる必要はございませんよ。・・・ほら、キラたちが踊ります。鑑賞いたしましょう。」
キラと悟空の歌と踊りは、息もぴったりで可愛い。そちらに意識を移させて、歌姫様も微笑む。キラは振袖だというのに、ちゃんとウインクの振り付けを踊っているし、悟空も合わせている。これが、なかなかお客様には好評で、リクエストの多い隠し芸だ。
「うわぁーかわいいっっ。これ、写真とか撮れないですか? ラクス。」
「うふふふ・・・・本日の分は、全て録画しております。明日、お帰りになるまでにお渡しいたしますわ。」
ベストショットは編集して、フォトブックも用意いたしますね、と、歌姫様は請け負った。基本、大明神様の可愛い萌え姿は、全て録画しているので、こういう場合は即対応できる。
「さすがですね。じゃあ、他にもいろいろと秘蔵映像もオプションでつけてください。」
「承知いたしました。三蔵さんのもつけましょうか? 」
「いりませんよ・・・・ああ、いえ、つけてください。」
いろんなコスプレをさせられている坊主なんてものは、なかなか楽しい。そのうち、それで弄ってやろうと元帥様は思いついた。
「それなら、八戒や悟浄のもつけてくれ。なあ? おまえらの艶姿も拝ませてもらいたいぞ。」
そして、さらに大将様も、そう付け足す。そのうち戻って来たら、その時のからかいの道具にするつもりらしい。
「捲簾さん・・・僕らのなんて渡しませんから。」
「まったくだぜ。うちのの艶姿なんてのは、俺だけが記憶してればいいんだよ。なんで、おまえらなんぞに拝ませてやらなきゃならないんだ。」
沙・猪家夫夫の反撃に、大将様も元帥様も笑顔でスルーだ。そんな楽しいものは拝まねばならない。そんなやりとりをしていたら、悟空とキラのウインクは終った。アンコールで、さらにもう一曲続けて踊る。それには、天蓬も参加すると立ち上がった。ほら、二人一組だからと連れられたのは、もちろん八戒だ。
なんだかハチャメチャな踊りが終る頃に、坊主が戻って来た。おら、と、タバコをひとりずつに投げて寄越す。
「やればできるんだな? 」
「ああ? 喧嘩なら買うぞ? 捲簾。」
「まあまあ、三蔵。ほら、喉を潤して。」
八戒がビールを渡すとぐびぐびと一気飲みだ。食事の用意もしているので、そこから食事タイムなんてことになる。いつもなら率先して、食事の世話をするはずのニールが動かない。おや? と、坊主が、そちらに視線を向けたら、真っ赤な顔をしている。
「おい。」
「ちょっと酔いがきてて・・・あははははは。」
「うちのに飲ませるな。飲ませるなら、そこのカッパかイノブタにしろ。」
「三蔵さん、アルコール中和剤は飲ませましたから、すぐに治まりますわ。」
上司様御一行の食事の世話は、ダコスタやシン、レイがやっている。小皿に、いろいろなものを取り分けて運んでいるし、悟空のところには一人前ぐらいの分量が、どかどかと配達されている。そして、ニールのところには鷹が氷を運んできた。それを口に含んで酔いを醒ませ、と、指示している。
「ニール、眠いなら俺に凭れてろ。」
「そこまで酔ってませんよ、金蝉さん。」
「接待してくれるんなら、そういうのでも楽しいんだがな? 」
「聖職者なのに・・・うまいことを言う・・」
「なんせ、三蔵の上司をやってるから。」
「あははは・・・金蝉さんも酔うと口説くんですか? 」
「俺は、あそこまで酔わねぇーよ。」
金蝉とニールが楽しそうに会話しているので、そのうち坊主がキレるかと、スタッフはビクビクしていたが、そういうもんでもないらしい。坊主のほうは、そこはスルーだ。おら、と、金蝉のグラスに酒を注いでいる。
「また遊びに来てくれるの? 」
「ええ、何年かしたら、また伺います。今度はキラくんも一緒に、遠征しましょう。その頃には、落ち着いているでしょ? 」
「そうだと思うよ、天蓬さん。」
「なあ、キラ。今度はさ、特区のもっと西に行こうぜ。それともカガリんとこの別荘でもいいんじゃね? 」
「ああ、そうだよね、悟空。オーヴなら案内できるよ? 僕の実家あるし。」
誰も、ここ数年に起こるだろうことは口にしない。その先のことを話す。それは希望的観測かもしれないが、それでも楽しい未来の想像だ。
食事が終れば、次はゲームタイムだ。本日は、ダーツを用意した。得点を競うので、みな、本気になる。童子様とニールが最下位を競うなんてことになって、なかなか楽しい対決になった。
そんな感じで大騒ぎして、歓送会は夜中前まで続いた。
わらわらと寺へ一行が辿り着いたのは、真夜中だった。呑んで騒いでだったが、誰も溺酔はしていない。そして、最後の夜だから、と、沙・猪家夫夫もやってきた。そして、寺の女房は歌姫様がお持ち帰りした。最後の夜は身内だけで、という心遣いだ。
「悟空も付き合いますか? 」
「もちろんっっ。ママがアテは冷蔵庫に入れてた。それと酒も入ってる。」
席の準備だけはしていたらしい。さすが気遣いの人だ、と、八戒も冷蔵庫を開ける。
「・・・楽しかった。」
「そりゃよかった。次は夏だな。」
「まだ一年近くあるんですね。長いなあ。」
「なんだよ、いつもなら一年に一回なんだから、今回は特別編だろ? 」
「また、こういうの行きたいなあ。」
「そりゃ、悟空にとっては、食い倒れツアーなんて最高の旅行でしょうね。」
「それもあるけどさ。みんなで一緒に旅行っていうのが楽しかった。」
悟空の言葉に、残りのものは、大きく頷いて微笑んだ。上司様ご一行にすれば、五百年以上かかって、もたらされた旅行だし、三蔵たちにしても過激な人生と旅の後のものだ。悟空が、そう言ってくれるだけで幸せな気分になれる。
「何年かに一度は、みんなで慰安旅行をやりましょう。それぐらいなら、どこぞの菩薩も目を瞑ってくれるでしょう。」
「そうだな。こういう休暇は悪くない。」
「これを励みに働くさ。」
上司様たちも、くいっと酒を呷りつつ、そう言葉にする。いつまで悟空が特区に暮らすことになるのかわからないが、その間は、こういうイベントもできる。それなら、気長に来訪も待っていられる。
「再来年くらいには、うちのほうも落ち着いているでしょうから、本山への遠征を長くするのでもいいんじゃないですか? 」
「けっっ、あんな辺鄙なところへ長く滞在していられるか。」
「てか、おまえ、ママと離れてるのが辛いんだろ? 三蔵。」
「死んで来い。」
「三蔵、家の中でマグナムはやめろ。」
「もう、ほんと、子供じゃないんだから、一々、マグナムを出さないでハリセンぐらいにすればいいだろうに。」
作品名:こらぼでほすと 闖入11 作家名:篠義