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とある悪魔の胸の内

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 それから、何十、何百、何千、何万という夜を過ごしたけれど。
 今でも夢に見るのは、何時までも変わらない彼女の姿。
 素朴で、飾り気も色気もなくて、知識も無く無教養、自分達より高位な存在に対する
口の聞き方一つ知らなかったというのに、私達を魅了する術だけは誰よりも知っていた、
人間。


 何度でも夢に見る。

 何度でも思い出す。




 ―――さくまさん。


 もう一度貴女に逢えたなら、私は、今度こそ貴女を守りますよ。
 グリモアなど無くても、契約など無くても、どんな災難からも守ってあげます。
 何より、もう一度貴女に逢えるのなら、悪魔としての何もかもを捨ててもいいと思う。


 ―――さくまさん。


 貴女は、生まれ変わる事が出来ますか。
 或いはもう、生まれ変わりましたか。
 転生は、神が愛する人間にだけ与えた特権でしたね。
 もしも、また人間として何処かに存在しているのならば。
 どうか貴女が、次の生を、あの時よりも長く、一秒でも長く生きてくれていますように。


 ―――ねえ、さくまさん。


 
 わたしはいまでも、あなたをあいしています。
 きっといつまでも、あなたをあいしていますよ。



 だって、貴女の想い出は、貴女だけは、何時まで経ってもこんなにも眩しいのですから。

 この先も、褪せる事などないでしょう。


 


 終

作品名:とある悪魔の胸の内 作家名:東雲 尊