二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ニューヨークのこども

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

いつものことさ、俺は彼がきらいで、なのに彼は俺を追いかけてくる。うっとおしいから、彼の顔、ひっかいてやったんだ。アルフレッドは得意げに鼻を鳴らした。じゃあなぜ俺のところに?言いかけた言葉は喉元に引っかかって、でてこなかった。アルフレッドのしんと澄んだ目が、寂しそうに揺れる。いつものことだけどさ、まあ彼も懲りずに来るよね、拒まれるの、わかってるくせにさ。ばかみたいだ。アルフレッドの空いたほうの手が、シャツに施された刺繍のあたりをくしゃりと丸める。やがて皺になってゆく。どうして彼は懲りずに来るんだろう、…どうして俺は懲りずに拒むんだろう。そういってアルフレッドはこちらの表情をちらと伺って苦笑した。すこし、しぼんだようにみえる彼の肩を叩こうとして、両手がふさがっているのをふいと思い出す。空いているのはくちびるだけだった。ルートヴィッヒはふ、と細いためいきを漏らす。…やっぱりお前たちは、兄弟なんだな。しぼんでいたはずの肩が、とたんにぱっとはねる。それを横目に、ルートヴィッヒは足元の二匹に引かれるかたちで、歩幅を広げた。すぐうしろのほうで反駁の声があがる。どこをどういう風にみて、おれたちが兄弟なのさ!おまえたちのそういう、素直じゃないところ、まるで同じじゃないか。おまえたちが兄弟だとわかるところなんて、他にもまだまだあるが、そういってくっくと笑ってやると、反駁はもう、ぴたりと返ってこなかった。かわりにアルフレッドと手渡した一匹が小走りになってルートヴィッヒの隣に追いつく。彼は悔しそうにむくれて、小さい舌打ちを幾度か繰り返している。…あんなのと兄弟だなんて、納得できないよ。盗み見たその口元が、わずかに緩んでいた。どうこう言ってもかれはまだ子どもなのだなあと思って、また少し笑う。木陰からぼんやりとした光の粒があふれて、足元で三匹がきもちよさそうにくうんと声を上げた。兄のいない、おだやかな休日だった。


ニューヨークのこども ( 20110623 / 米+独 )


作品名:ニューヨークのこども 作家名:高橋