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驚異な好意

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カーテンの隙間から射し込む朝日が、薄暗い部屋を明るく照らす。
すやすやと心地良い眠りについていた綱吉は、その光に促されるようにゆっくりと瞼を開いた。
寝起きの所為かはっきりしない頭で朝か…と思考を巡らせて、暫くの間は動くことなくぼんやりとしていたが、次の瞬間にははっとしたように跳ね起きた。
寝ているリボーンを一瞥した後、きょろきょろと部屋を見渡したと思うと素早くベッドを下り、窓辺に近づいて閉じてあったカーテンを勢いよく開いた。
部屋の中に微かに漏れている程度だった朝日は遮断するものがなくなったことで更に強い光と熱が射し込み、薄暗い部屋に慣れていた綱吉は急な視界の変化に眩しさを感じて、その幼い顔立ちを歪めた。
徐々に慣れていく視界と共に認識できる窓の外には、いつも当たり前だった風景、しかし昨日まではなかった風景が目前にある。
(そっか…元の世界に戻って来たんだっけ)
そう、綱吉は昨日帰って来たのだ。

本来の世界へ。
恋しかった自分の家に。

その事実を実感したくて、綱吉は窓を開けた。
人の話し声が賑やかな昼間と違って、朝は静かな風の音とチュンチュンと囀る可愛らしい小鳥の声だけで、偶に車が通り過ぎるくらいだから静かだ。
その時、今日は何かある、と嫌な予感が過ぎ去っていった。
ますます研ぎ澄まされていく超直感は便利なようで、そうでもないことは確証済み。
自然と顔を顰めてしまいそうであったが、暖かい風が綱吉を包むように通り過ぎて、久しぶりに感じる穏やかさにふわりと微笑んだ。
これは夢ではないのだと、何回も窓の外に広がる並盛を見渡して確認していると、聞き慣れた声が耳に届いた。

「おいツナ。時間だぞ」
「あ、リボーン。おはよう」

いつの間に起きていたのか、着替えを済ませたリボーンが綱吉の近くに立っていた。
帽子にレオンを乗せ、仁王立ちで見上げてくる家庭教師。
この遣り取りも久しぶりだなぁと感慨耽っていると、おいダメツナ!と真横から強烈な蹴りが襲い、間一髪で避けた綱吉は目尻を吊り上げてリボーンを睨んだ。

「うわぁ!……何すんだよリボーン!!」
「何すんだ、じゃねぇ。珍しく早く起きたかと思えば、いつまでそんな呆けた顔してやがる。もう時間だぞ、雲雀に咬み殺されてもしらねぇからな」
「へ?」

リボーンの呆れの滲んだ言葉にぱちりと瞬きをした綱吉は、次いでに時計を確認した。
目覚ましがセットされているはずの時計は、既に起床時間を20分ほど過ぎている。
毎朝鳴るはずの目覚まし音を綱吉は聞いていない、いや、聞こえていなかったのだと認識した綱吉は大きな悲鳴を上げ、パジャマから制服へと着替えると同時にドタバタと騒がしい音を立ててリボーンを横切り部屋を出て行った。
階段を急いで駆け下りる音がリボーンの耳に届いたが、次いで聞こえたドスンッという何かが落ちた音と、いってー!という声に呆れた吐息を吐いて窓辺に軽やかに飛び乗り、綱吉が見ていた窓の外の風景を眺める。
リボーンにとっても、この家に来てからの生活は実は気に入っていたので、また戻って来られたことに安堵し、自然と目元を緩ませた。
そこへ、遠くに黄色い鳥が飛んでいる様子が見えた。
見慣れた鳥だと気付くのも時間は掛からず、暫く様子を窺っていると時間が経つごとに姿がはっきりとし、段々とこちらへと向かって来ていることが分かった。
更に視線を道に移せば、遠目では分からなかった見慣れた黒い人物もこちらに向かっているようだ。
この時間、その黒い人物はもう既に学校に登校しているはずで、大体が応接室で書類の処理を行っていることをリボーンは知っている。
見回りは一日三回で、早朝4時から5時、昼1時から3時、夕方から夜にかけての5時から7時と大体決まっていて、多少時間がずれる時もあるが今までこの時間帯に姿を見たことは一度もなかった。
…となると、これは意図的なものなのだろう。
未来から帰って来た時に、並盛神社で仲間と楽しそうに会話をする綱吉を暫く見詰めていた様子を回顧し、リボーンは胸中で面白くなりそうだなと口角を吊り上げた。

作品名:驚異な好意 作家名:水越玲奈