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驚異な好意

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部屋を飛び出した綱吉はドタドタと慌ただしく階段を駆け下り、あと一段という手前で足を滑らせ、久し振りの我が家で見事ドジ気質を盛大に披露した。
後ろに倒れそうになる体を立て直そうと無理に前屈みにしたことで頭から落ちそうになったのだが、どうやったのか……器用にも尻で着地するという成長を綱吉は見せた。
しかし、残念ながら誰しもその姿を見てはいない。
果たして成長と言えるのか判断し兼ねるところではあるが、少なくとも今までの綱吉ならば頭からの落下を間逃れることは出来なかったはずなので、微少ながら成長しているらしいが……素直に喜べないものである。
リボーンが傍にいたなら、「相変わらずドジだな…」と口を開いた後に、「だが器用な着地だな。前より成長してるみてぇだし、良かったな」と、褒めているのか貶しているのか分からぬ言葉をくれただろう。
獄寺なら「十代目大丈夫ですか!?でも十代目、すごいっす!どうやったんですか!!」と心配しながらも瞳をキラキラと輝かせていただろうし、山本なら「大丈夫かツナ。頭から突っ込んだはずなのに、すげぇのな!」と満面の笑顔を向けられていたことだろう。
容易に想像出来る皆の反応に、どうせならドジ気質自体がなくなればいいのにと心の奥底で呟きながら、綱吉は苦痛の声を漏らした。
そこへ大きな音がしたことで食卓から奈々が姿を現し、一瞬驚いたように口元に手を添えた。

「あらあら、大丈夫なのツっ君?」
「……っな、なんとか……」

立ち上がろうとして感じた足首の痛みに、い……ったー!と苦痛の声を漏らしながらも心配して様子を見に来てくれた奈々に返答する。
鈍い動作で身を起こした綱吉は先程から疼痛する足首を見下ろし、溜め息を一息。
どうやら捻ったわけではないらしいが、軽く打つけたようである。
今は見掛け何ともないが、もしかしたら後で青痣くらいは出来ているかもしれない。
痕は残らないだろうが未来から戻って来たばかりで傷が癒えていないにも拘らず、早速傷を増やすなんて相変わらずついていない。
少し気持ちが沈みかけた綱吉だったが、学校の登校時間が迫っていることを直ぐに思い出し、痛みが残っている足を無視して洗面所まで鈍い動作で歩き出した。

作品名:驚異な好意 作家名:水越玲奈