DH/PL新刊「i kiss you (n&d)」
「また違うことを考えているね」
陽だまりの中、いつのまにか雲雀はディーノの傍らに立っていた。
ディーノは白昼夢から戻ってきたようにふんわりと笑う。
「いや、おまえのことを考えていた」
「どちらでもいいけど、跳ね馬ディーノ、僕の心臓に爆弾を埋め込む利益って誰にもどこにも無いよ」
「いや、冗談だって」
「――あぁ、あなたを目の敵にしているファミリーだったらアリだね。あなたは並盛から離れられない」
理由は自分だと言外に云い放った雲雀はボンゴレ匣から取り出した手錠を指にかけてくるくると回し始める。銀色の軌跡を目で追っている間に、本を持つ手が取られてその手首にカシャンと手錠がかけられた。そしてもう一つの輪は雲雀自身の手首に嵌められる。
「だったら、離れられないようにするまでだ」
ディーノは手錠をかけられた感情の右手を引きながら本を払い落して、雲雀の体を自分の上に引き寄せて倒す。
跳ね馬の紋章が躍る理性の左手で雲雀を抱えて、髪が乱れて覗く額に唇をおしつける。
「縛られる人生はごめんだと思っていたけれど、おまえならいいな」
「何言ってんの、僕はあなたのことなんて考えてないよ」
「知ってる、それが恭弥だ」
猫のようにディーノの上で心地のいいところを探した雲雀は、あふ、と胸の上で欠伸をし、その頭をなでる手の甲には青い炎が踊っている。二人が繋がる奥まった箇所で鎖の触れる音が零れた。
「後で外してくれよ」
「――覚えていたらね」
忘れるわけないじゃないか、とディーノは雲雀を抱え直し自分もまた目を閉じる。
雲雀に囚われたディーノは改めて雲雀をその腕に捕え直す。気まぐれな猫に首輪はつけられない。でも虜になったら心を囚われる。そしてそれは気持ちが走り去るまで離れがたいものになる。体の距離より強固で脆いもの。ディーノは雲雀に手を囚われて、雲雀の心を捉えた。手錠よりも強い気持ち。それこそが二人を繋ぐ見えない絆。
'09全国大会R11のプチオンリー「Cuffmaniax」用ペパ
作品名:DH/PL新刊「i kiss you (n&d)」 作家名:だい。