ソードマンの独白-7.5 神のみぞ知る
なのに、いいのか? って、彼とは思えないほどに弱々しい声で尋ねられた。何を? と。背後からおれを抱え込むようにしてる彼に、そう尋ねようとした。だけどできなかった。まあうん、内部(なか)の弱いとこを指二本で刺激されながら、先走りと前に出したのでぬるぬるになってるものの根元を抑えられたらあんまり複雑なことはできないと思う。ずるい。
次に彼が口を開いたのは、おれに自分で自分のを愛撫させるためだった。ホントにずるいと思う。その後は、上に乗ったりなんやかやで忙しくて、詳しいことを聞くヒマなんかなかった。
――多分、彼が言ってたのは、未来(さき)がないとか、与えられるものは何もないとかそういう話のことだと思う。与えられるものについてはともかくとして。未来(さき)については、いつくるかわかんないそれより、今彼に触れられないことの方がイヤだから、ひとまずは目をそらしてる。そらしながら、その未来が来るころに、彼の気が変わってないかななんて都合のいいことも考えていたりとか。うん。だって、おれが思ってたより、多分彼が自覚してるより、この人ずっとおれのこと好きみたいだし。
オマエのことは必ずしも優先しないとか。おれ以外の相手に対して何されてもいいとか。未来(さき)はないけど、しばらくつきあってほしいとか。ほかを知らずに安易に決めつけるなとか。自分のことを好きだと思ってることも含めて興味深いとか。全部ホントだとすると――ホントのことを全部おれにさらしてるんだとすると、この人おかしいんじゃないかと思う。それでおれが頷くと思ってんのかよ。
たった一言、好きだって言えば全部目をつぶったと思う。でも彼は言わない。でも、限りある時間をさいてほしいという。旧友の人にしたって、若気の至りと顔をしかめるより、今はそう言う相手じゃないとだけ言えば十分なのに。……ていうか、そういえばしてみてもいいのかもしれないなとか、一回やったら二回も三回も同じとか、どうしてそこで言うかなこの人。おれがじゃあどうぞなんて言うわけないじゃん。じゃあいっしょにとかもないから。めんどくさいからしないって言ったって、聞いちゃったらしっかり邪魔しなきゃって思うってば。過去にしたことがあったっていうことすら気に入らないんだから。向うにそんな気があるはずがないとか、それアンタの決めつけだから。他人の顔色とか思惑とかうかがうの、超苦手なアンタの。
まあそんなわけで。言ってないことはあるだろうけど、言ったことは多分言葉通りに信じていいんじゃないかと思う。
うん。なんにせよとりあえず。この先、使命に従うため郷里に帰るときに別れるっていうのと、おれにいれさせる気はないっていうのについて、彼の気が変わるようにがんばってみようと思う。……って、何をすればいいかなんてあてはないんだけど。
fin.
作品名:ソードマンの独白-7.5 神のみぞ知る 作家名:東明