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会縁雨縁

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第六天魔王の元に、人の心のみならず天候すら操れる人間がいる。
そんな噂が立ったのはいつからだっただろう。少なくとも自分が三つ目の城を落としてからかな、と“かれ”は丘の上に立ってその城を見ながらぼんやりと思った。正確に言えば、落としたのは“かれ”ではないが。
空はどんよりと黒に近い灰色の雲に覆われており、時折稲光が見える。
まもなくすさまじい嵐になることは間違いない。

「・・・殿、兵の配置がすべて完了したと信忠様が」
「分かった。嵐になり次第攻めろと伝えてくれ」
「了解しました」

浅葱色の戦装束に身を包み、黒い扇を手に持っただけ、という異様な格好をした“かれ”は
恐らく今回の作戦もうまくいくだろうと考えていた。別にうぬぼれているわけではない。
何百回もの計算を繰り返し、ありとあらゆる不確定要素を考慮した上でそう結論したのだ。

あの城を落とせ。

そう言われたのは一週間ほど前、信長と同盟を組んでいたとある大名が信長を裏切り、彼と敵対する勢力と手を組んで攻めて来た時である。信長が怒り狂ったのは言うまでもない。
現在、信長は敵対勢力を分断し、各個撃破する作戦を指揮している。この城の攻略もその作戦の一つで、彼は息子の信忠を差し向けることにした。それと同時に書庫にいた“かれ”を呼び出し、作戦立案者として信忠に付けたのである。
ばらりと“かれ”は扇を開き、ぱたぱたと扇いだ。湿気のおかげで息苦しく、戦装束は
じっとりと身体にまとわりついた。“かれ”は本当はいつも着ている着物を着たかったのだが、
信長から賜ったので仕方が無くこれを着て出て来たのである。

「そろそろ、だな」

そう言ってぱちんと扇を閉じる。そのとたんに雷が鳴りだし、勢い良く雨が降りだした。
後ろに控えている伝令の兵がおお、と感嘆の声を上げているが“かれ”は気にも留めない。
作品名:会縁雨縁 作家名:taikoyaki