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The first star of the evening

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朝起きて傍らで眠っているいる人の顔を覗こうと振り向くと、そこに目的の人は居ない。
どこに行ったんだ?と思い起き上がり1階にあるリビングに向かう。


「ロイ…何処だ?」


リビングに居ない。
キッチンにも、書斎にも、
出かけた形跡はないから居るはずなのになかなか見つからない。
ふと視界の端に窓が映った。
気になって窓を覗くと、ある程度手入れされた庭に既に軍服を着たロイが居た。


「ロイ、おはよ。早いじゃん。」


窓から顔を出し、話しかけるが返事がない。
声が聞こえていないのかと思い、
少し大きな声でもう一度呼んでみたがやはり返事がない。
自分も庭に行くしかないか、と諦めて玄関に向かおうとしたら、
鋼の、と呼ぶ声が微かに聞こえた。


「ロイ?」


もう一度顔を出すと、ロイがこちらを見ていた。
その顔がやけに真剣で、でもどこか辛そうで…


「何か事件か?」


こんな朝早くに軍服を着ていたから、
てっきり何か深刻な事件でも起きたかと思ったけど、違ったみたいだ。
いや、という短い返事がきて、じゃあ何だと考えていたら。

まっすぐに見つめられた。
そして想像もしてなかった言葉が紡がれた。





「別れよう。」




いつもより低い声でつぶやかれたその言葉を理解するのに時間がかかった。
そして理解した瞬間、俺は駆け出した。
庭に向かってロイの胸倉を掴んで叫んだ。
朝っぱらだとかそんなのはぶっ飛んでとにかく叫んだ。


「ふざけるなっ!!」


ふざけてないのも、冗談じゃないのも分かってた。
さっきの目が本気だって伝えてた。
だから、分かってた。
だけど、受け入れられなくて叫び続けた。


だけどロイは、振るえながらも必死に掴んでいた俺の両手を振り落とした。
その瞬間に何もかもが終わったような気がした。
そんな気がするだけなら良かったのに、それは無情にも現実だった。


「私はもう仕事に行く。その間に君は家にある荷物を持って出て行け。」


俺はその場から動けなかった。
ロイはそんな俺に背を向けて歩き出した。
引きとめたかったのに震える体がいうことをきかなくて、
呼びとめたかったのに口がパクパクと動くだけで声が出なかった。


そうして俺たちは別れた。







【The first star of the evening】







あの日は俺たち兄弟が全てを取り戻した次の日だった。
アルの体調を考えてささやかだが、皆でお祝いをした。
そして、アルに気を使われたかたちで俺はロイの家に泊まった。


ロイとは2年近く付き合っていた。
周りの皆も、アルも認めてくれていた。
俺は本気でロイが好きだった。
あの絶望の中、光をくれたロイが大好きだった。

俺はてっきりこの恋は片思いで終わると思っていた。
だけどロイに告白された。
その時は死ぬほど嬉しくてかっこ悪いけど号泣だった。

いつまでも一緒に居たい。
その気持ちに頷いてくれた。
だから、ずっと一緒に居るんだと思ってた。


ロイと今までのたわいもない話をたくさんして、
今にも寝そうな俺をロイはベッドまで運んでくれた。
おめでとう、ゆっくりおやすみとロイが俺の目蓋にキスをした。
唇がすごく震えてたけど、なんだかそれがくすぐったいけど嬉しくて眠りについた。

翌朝、別れるなんて思いもしないで。



あれから4年がたった。
アルは体力も戻って大学に通うために勉強している。
ロイは昇進して准将になり、今はセントラルに居る。
俺はロイが移動になった後イーストに移り、普通に働いて、普通に暮らしてる。

中尉や少尉とはたまに連絡を取り合ってる。
ロイと別れた直後にひどく心配をかけてしまったみたいで、
ちょくちょく連絡を入れるよう約束させられてしまった。

だけど、ロイとは別れた後、国家錬金術師をやめる手続きで何度か顔を合わせたきり。
だからほぼ4年間、会っていないし、連絡もとっていない。


それでもまだ俺はロイのことが好きだった。
今でも、ロイが最初で最後の恋だと思ってる。
自分でもいつまでも未練たらしくて、心底重い奴だという自覚があるけど、

叶わない恋が叶った

微かだが、その時の幸福が今でも俺を動かす原動力になっている。
だから、切り離したくても切り離せない。



作品名:The first star of the evening 作家名:おこた