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The first star of the evening

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7月2日、天気は晴れ。



俺は久しぶりに髪を1つに結うのではなく三つ網にした。
前より長くなったなと実感する。


いつものように朝食を食べて、
靴を履き、玄関を開ける。


まっすぐあの公園へ向かう。
ロイと別れてからは訪れることの無かった公園へ。



朝の公園は人が少なく鳥の囀りがよく聞こえる。
俺は1つしかない赤いベンチに座って目を閉じ、耳をすませた。

こんなにおだやかな気持ちは久しぶりというか初めてかもしれない。
この公園で鳥の囀りを聞いたのは初めてだ。
ロイと朝に来たことがないわけではなかったけど、いつも俺はドキドキしてた気がする。
あの時は余裕が無かったからなと思ったら笑みがこぼれた。


そう思って見回してみると、いろんな事に気付く。

花壇にはいつも綺麗に花が咲き誇っていたこと。
植木もちゃんと整えられていること。
このベンチからは朝日が見られること。
アルが大好きなネコが横切ること。


「俺は色んなものを見落としてたんだな。」




そうこうしている間に時間は過ぎていった。
夕方、だんだん雲行きが怪しくなってきて、とうとう雨が降ってきた。
先ほどまでいた、親子や恋人達も皆引き上げて行った。


「傘、持ってくりゃ良かったな。」


俺はここから離れるつもりはなかった。
ポツポツと服に染みをつくっていき、全部の色が変わってしまったって動かない。


「天気予報晴れだったくせに。」


俺のつぶやきは雨の音にかき消された。

雨の日は、あいつ無能なんだよな…
雨だと調子くるってばっかりで、
ただでさえ湿気たマッチなのにさらに無能で、
よく中尉に怒られてたよな。



無能なら来れないかもな…




そんな風に考えてる今も俺は穏やかに笑えてる。
もう日が沈み、辺りは暗くなった。
いまだに振り続ける雨雲のせいで夜空は台無し。
きっと綺麗だろうなと思ってたから少し残念。

ロイと二人でここの夜空見たかったな。
夜空だけじゃない、この公園の朝日や夕日、花壇。
今日俺が気付いたこと全部ロイに教えてやりたかったな。

もしかしたら全部知ってるかもしれないけど。
それでも、俺が教えてやりたかったな。




さて、そろそろタイムリミット。


俺はゆっくりとベンチから腰をあげる。

最後に目を閉じて

音を聞く。


雨の音。


ロイとの別れにはぴったりだったかな。




ザーザーザーザー

ザーザーザーザー


良く聞けば良い音かもな。



ザーザーザーザー

ボツボツボツボツ


音が変わった…?
ゆっくりと目を開けると―――



さっきまでは冷たいものが頬を濡らしていたのに、
今は暖かいものが頬を濡らしてる。


「おせぇ。」


「すまない。」

「無能。」

「厳しいな君は。」


俺がビショビショに濡れてることもおかまいなしに、ロイは抱きしめてくれた。
俺もロイの背中に手を回す。

あったかい。






ロイ、大好きだ。



エドワード、愛してる。



ハハッエドワードだって。



君はもう鋼じゃないからな。



もっかい呼んで。



エドワード。



なぁずっと・・・



ずっと一緒に居てもらうよエドワード。



…うん。



もう決して手放したりなどしてやらん。
覚悟しておけ。



覚悟ならとうに出来てるっつの。






「見たまえ。」


「ん?」




いつの間にか雨は止み、雲が晴れ、
二人の頭上には夜空が広がっていた。

一番星のすぐ隣、寄り添うように負けないぐらい輝く星があった。
まるで二人を祝福するかのようにその星たちはキラキラと輝いていた。






「やっぱり綺麗だった。」






end

作品名:The first star of the evening 作家名:おこた