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ハガレン短編集【ロイエド前提】

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エドが飛び付くと思っていたファルマンは、予想に反して軽く流され、体中の力が抜けてしまった。


「准尉?どうしたの?半分持つよ?」

「あ・・・いや・・・いいよ・・・」

「そう?」


じゃぁねと言葉を残し、エドはさっさとその場を後にした。

一気にずしりと本の重みが腕に掛かる。


「はー・・・」


ファルマンはがっくりと、肩を落とした。




「よぉし、次は俺だな。」


休憩室の中から廊下を覗き、ブレダは気合を入れるように呟いた。

こちらに向かって歩いて来るエドと、目が合う。


「おぉい、エド!」


ドアから身を半分出し、エドを手招きする。


「ブレダ少尉。」


エドはブレダの傍に来ると、「どうしたの?」とブレダを見上げた。


「新しいゲームを手に入れたんだ。東の島国のゲームでな、『イゴ』ってんだ。やんねぇか?」

「ふぅん?どんなゲーム?」


聞き返され、よっしゃ!とブレダは心の中で声を上げる。


「基本的には陣取りゲームだ。白と黒の石で場を増やして行くんだ。教えてやるからやろうぜ。」


ちょっとやそっとでは終わらないと言う事は、わざと告げずに。


「面白そうだけど・・・時間掛かる?」


そう、言葉を紡いだエドに、ブレダは一瞬言葉を飲み込む。


「え・・・いや・・・まぁ・・・そりゃ・・・な・・・」


言い澱んだブレダに、エドはあっさりと。


「じゃあまた今度教えてよ。」


それじゃ、と手を振り、エドは休憩室を通り過ぎて行った。


「・・・ちッ・・・」


ブレダは小さく舌打ちし、休憩室に居た他の者達を見回して、言った。


「おーい、誰かやらねぇか?」





「ハボック少尉ー。」


執務室に向かう途中、エドは前方を歩くハボックを見つけ、声を掛けた。


「よぉ、エド。」


振り返り、ハボックはエドが追い付くのを待つ。


「ねぇねぇ、今日って暇な日なの?」


どうやらここへ来る迄に出合った面々の事を言っているらしい。


「あぁ、最近大佐の仕事が捗ってたからな。俺達に皺寄せが来ないんだ。」

「へぇ?そうなの?」


そう言って、くすくすとエドは笑った。


「ねぇ、大佐は?」

「あぁ、今会議中だ。さっき始まったばかりだから暫らく終わらねぇぞ。」


本当は既に終わっているのだが。

ハボックはいけしゃあしゃあと言ってのけた。


「何だぁ・・・」

「まぁ、こっちで待ってろよ。ホットココアでも淹れてやるよ。」


がっかりしたように息を付いたエドの肩をぽんと叩き、ハボックはエドを促した。

エドは素直に頷くと、ハボックと共に執務室の前を通り過ぎた。





「今の所ハボック少尉が優勢か・・・」


ドアの隙間から廊下の様子を覗きながら、ヒューズは面白そうに呟いた。


「勝負は決まったかな?」


ぽつり、と、そう零した時。


「・・・ヒューズ。」


背後から、不意に声を掛けられた。


「何をやっている。」


振り返ると、不機嫌そうにロイがこちらを睨んでいた。


「よぉロイ!居たのか!元気だったか?」


あっはっは、と声を上げ、ヒューズは窓際の椅子に背を預けるロイに近寄った。


「全く・・・何処から湧いたんだ・・・」


ぶつぶつと文句を言いながら、ロイは目の前の書類を端に寄せる。

恐らく先程の会議の資料だろう。


「どうした?機嫌悪そうじゃねぇか。」


ロイはふいと視線を外すと、「別に」と小さく呟いた。

どうやらエドが中々姿を見せないのでイライラしているのだろう。

今日エドが来るので、珍しく溜まっていた仕事を速攻で片付けたと言う話だ。

まぁ、何しろ久し振りらしいからな。


「所でお前は何しに来たんだ?」

「何って・・・愚問だぜロイvお前に愛を囁きに来たんじゃねぇかvv」


ロイの言葉に、ヒューズがそう返せば、ロイは思い切り眉間に深い皺を寄せた。


「・・・ヒューズ・・・」


くだらない事を言うんじゃないと言ったように。


「軽い冗談だろ?流せよそれくらい。」


言いながら、ヒューズはソファーにどっかりと腰を降ろした。


「で?どうなんだ?最近。」


ロイは軽く眉を上げ、小さく息を付く。


「ぼちぼち、と言う所か。」


良くも悪くも。


「ふぅん?」


話してみろよと言う様に。

ヒューズは軽く、ロイを促した。




一方。

エドを足止めしていたハボックは。

エドの居ない間のロイの様子を、エドに話して聞かせる事で、見事に一人勝ちを果たしていた。

特にそうしようと思っていた訳では無い。

何も戦略を考えていなかったハボックは、たまたまエドと話している際、そう言った話の流れに
乗ったのだった。

流石にロイの話だと、エドの食い付きが良い。

してやったりと言う所か。

まぁ、ここまでエドを足止め出来りゃ上等だろう。

そう、ハボックは思いながら、ちらりと壁に掛けられた時計を見た。

エドと話し出してから、実に40分は過ぎている。

一蹴された他の者達と比べ、遥かに優秀だと言えるだろう。

まぁ、こんな物かな。

ハボックがそう思った時。

職務で外に出ていたホークアイが、姿を現した。


「あら。エドワードくん。」


ホークアイはハボックの向かい側に座るエドに気付き、声を掛けた。

落ち着いたトーンの声が、心地良い。


「久し振りね。元気だった?」


自分の席に荷物を降ろしながら、言葉を紡ぐ。


「うん。中尉も元気そうだね。」


エドの言葉にくすくすと笑いながら、ホークアイは持ち帰った荷物の中から紙袋を出した。


「これからお茶菓子にパウンドケーキ作るけど、一緒に作る?」


勿論大佐にも出すわよ、と続けられた言葉に、エドは瞳を輝かせ嬉しそうに頷いた。


「やるっ!!」





エドとホークアイを見送り、ハボックは数本目の煙草に火を点けた。

ゆっくりと煙を吐き、今頃は厨房でパウンドケーキを作り始めているのだろうなとぼんやりと考える。


「確実に2時間は掛かるな・・・」


ぽつりと呟き、勝者はホークアイだなと確信する。


「ハボック少尉!頭数足りないんで、入って貰えますか?」


不意に顔を覗かせた下士官に、「はいよ」と答え、マグカップに残っていたコーヒーを呷り、ハボックは
席を立った。


「何の頭数だ?」


そう言いながら、ハボックはドアの向こうに消えた。





「遅い・・・」


ぽつり、と言葉を零す。

いつもなら既に、着いている頃だ。

ここへ来るのが解っているだけに、下手に執務室を出られない。

先程まで話を聞いていたヒューズは、目の前のソファーで気持良さそうに眠っている。


「全く・・・」


息を付き、ロイは深く椅子に背を埋め、瞳を閉じた。





約2時間後。

嬉しそうに二人分のパウンドケーキと紅茶をトレイに乗せて、執務室に向かうエドの姿があった。





                                       Fin.