ながいともだち
「あ~~、もう、邪魔な髪の毛だなあ~~~~」
聖遊男ジャックは、わしわしと髪の毛をかきあげた。
くせ毛の髪はくるくると、腰くらいまで伸び広がり、先っぽを小さく結わえたかたまりが十近くもぶら下がって揺れている。両手でも余るほどの髪の量だ。
「君は、神帝の時には、短かったからねえ、聖遊男ジャック」
一緒に歩いている聖幻ピーターが、微笑んだ。
しかし、ジャスミンのように爽やかな彼の笑顔も、不機嫌な男ジャックには届かなかったらしい。
「ああ~?」
男ジャックは足を止めた。
「君”は”って、お前だって、神帝の時には短かっただろ?聖幻ピーター!」
「僕かい?」
先に行く形になったピーターが、振り返った。
「僕、昔は髪を結い上げて、帽子の中に入れてたんだよ」
「ええ?!」
驚いた男ジャックは、慌てて昔のピーターの姿を思い出してみた。
確かにピーターは、若神子の時も神帝の時もきっちり帽子を被っていた。
出ている部分が短かったので、てっきり短髪だと思っていたのだが……。
「そ、そうだったのかー?!」
ピーターの姿をまじまじとみつめる。
ピーターは、そのジャスミンな笑顔を男ジャックに向けたまま言った。
「嘘だよ」
男ジャック、足ゴケ。
「おーまーえーなーーー」
さらに不機嫌な声を出す男ジャックに、ピーターは、声を上げて笑った。
「僕も長いのは初めてだけど、そんなに気にはならないなあ」
「そうなのか?そんなら気にしてるのはおいらだけなのかよー……。あーあ」
男ジャックは思わず深いため息をついた。
気落ちしたままの表情で、力無く歩きだす。
ピーターは、そんな男ジャックの後姿を見、自分の首に巻き付いたマフラーを見たあと、小さく首をすくめた。
「実は、この格好なら、僕もずいぶん気になってるんだけどね……」